2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K05593
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
尾西 尚弥 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (50768223)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ギ酸 / 耐久性触媒 / 水素発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の環境問題解決のため,CO2排出を抑制する水素エネルギー社会への移行が求められている.そのため,水素貯蔵材料であるギ酸を分解し,水素を効果的に発生させる触媒の開発が盛んに行われている(HCOOH → H2 + CO2).種々の有機金属錯体が触媒活性を示すことが報告されているが,耐久性に関する研究例はあまりない.実用化へと近づくためには,耐久性の高い触媒開発が必須である.そのため,提案者は,当該反応における高い耐久性を有する均一系触媒の開発を実施した. 提案者がこれまでに開発した触媒の中でも,ピリジルーピラゾール配位子を有するIr触媒が活性は低いが,触媒耐久性に優れていることを見出していた.そこで,同配位子をさらに改良し,ピリジン環,ピラゾール環,それぞれに耐久性向上が望める電子供与性置換基を結合させた新しい配位子を合成した.新規配位子を有するIr触媒はギ酸の分解による水素発生反応に対し,触媒活性を示すことを見出したため,耐久性についても検討した.具体的には,80wt%のギ酸水溶液に対し,新規触媒を添加し,60℃で触媒性能を評価した.結果,高い酸性度の溶液中にもかかわらず,新規触媒は失活することなく反応を完了させることができ,高い触媒耐久性を示した.さらには,ギ酸の濃度に関係なく,新規触媒は還流条件においても触媒性能を発揮し,失活することなく反応を完了させることが明らかとなった.本反応は酸性水溶液中という過酷な反応条件であるため,そのような中で高い耐久性を示す稀有な水溶性触媒を開発することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子供与性の置換基が触媒活性と耐久性に影響を及ぼすことを想定し触媒を開発し,実際に高活性かつ高耐久性の触媒を開発に成功した.目標とする長時間反応は行っていないものの,短時間での加速試験において良好な耐久性に対するデータを得られることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,開発した触媒を用いてより長時間での反応における耐久性試験を行う.また,電子供与性だけでなく,電子吸引性の置換基についても触媒耐久性への影響について評価を行う.これまでに配位子上の置換基の電子効果について耐久性に対する網羅的データがないため,今後の実験指針として必要になると考えられる.
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた,高価なイリジウム試薬の使用量が少なく済んだため. また,コロナ禍のため,旅費が使用されなかったため. 本年度は,イリジウム試薬購入や種々の配位子をスクリーニングするために使用する.
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