2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of warped nano-graphene for advanced batteries
Project/Area Number |
20K05617
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
服部 義之 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (20456495)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リチウムイオン電池 / カーボン材料 / フッ化鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属フッ化物系材料を正極活物質とするリチウムイオン電池(LIB)は高容量・低コストであり,従来のLIBに替わる有望な二次電池として実用化が期待されている。本研究では、LIB用正極活物質として特に有望なフッ化鉄系材料の調製とLIB特性の評価を目指している。今年度は、鉄イオンを含浸した綿繊維の焼成により鉄-炭素コンポジットを作製し,そのコンポジットをフッ素化することでフッ化鉄ナノ粒子と炭素からなるコンポジットを作製した。また、調製したコンポジットの構造とLIB特性について評価を行った。 洗浄済みの綿繊維に1 mol/L硝酸鉄水溶液を浸漬し乾燥した後、1000℃で焼成を行い、鉄-炭素コンポジットを作製した。鉄-炭素コンポジットの透過型電子顕微鏡像より、50 nm程度の鉄ナノ粒子の生成、および鉄ナノ粒子の周りに一部黒鉛化が進行した薄層黒鉛領域が生成していることが確認できた。このコンポジットを573 Kでフッ素化することにより、炭素領域は保持された状態で粒子径が約20 nmのフッ化鉄ナノ粒子を調製することができた。この結果より、充放電時の電極活物質の構造変化に伴う電極のサイクル劣化の低減を目的に目指していたフッ化鉄のナノ粒子化および炭素被覆が達成できたといえる。 調製したフッ化鉄-炭素コンポジットを電極とし、1 mol/L六フッ化リン酸リチウムを含むEC+DEC電解液を用いてLIB特性を評価した。電流密度50 mA/gで充放電測定を行った結果より、第1サイクルにおいて64 mAh/gの可逆容量を示した。鉄-炭素コンポジット中の鉄の含有量を示差熱-熱重量同時測定装置(TG-DTA)により見積、フッ化鉄-炭素コンポジット中のフッ化鉄当たりの容量を算出したところ、192 mAh/gの容量であった。以上の結果より、調製したフッ化鉄-炭素コンポジットがLIB電極として作用することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験面においては、目指していた次の3点が達成できたため、概ね順調に進行していると判断した。①予定していた構造を有するフッ化鉄-炭素コンポジット、すなわちナノサイズのフッ化鉄の調製とフッ化鉄ナノ粒子-炭素コンポジットの調製に成功した。②電池特性の向上のため目指していた薄層炭素によるフッ化鉄ナノ粒子の被覆が透過型電子顕微鏡観察により確認できた。③リチウムイオン電池特性を評価したところ、フッ化鉄ナノ粒子-炭素コンポジットが、可逆的にリチウムイオンを吸蔵・放出し、リチウムイオン二次電池電極として作用することを確認した。 成果発表の点では、論文を1報報告した。鉄-炭素コンポジットのフッ素化の際に炭素領域のフッ素化反応特性およびその構造解析の一環として重要な知見となる「活性炭素繊維のフッ素化と構造および物性変化」に関して明らかにし、論文発表を行った。 以上に示したとおり、実験面において当初予定していた材料の調製と電池特性の評価を実施できたこと、および研究成果の一部を論文発表できたことから概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄-炭素コンポジットの作製とそれをフッ素化することにより、フッ化鉄ナノ粒子からなるフッ化鉄-炭素コンポジットが調製できたが、鉄の含有量がまだ十分ではない。炭素前駆体への鉄の含侵方法を詳細に検討し、より鉄の含有量の多い鉄-炭素コンポジットの作製を行い、フッ化鉄含有量の多いフッ化鉄-炭素コンポジットの調製を行う。また、導電性の向上のため、炭素前駆体の構造や種類、および焼成条件を再検討し、被覆する炭素の薄層化と黒鉛化度がより発達したフッ化鉄-炭素コンポジットの調製を行う。さらに、炭素前駆体の繊維構造の利用などにより、フッ化鉄ナノ粒子の構造の低次元化を行い、イオン拡散性が優れたフッ化鉄-炭素コンポジットの作製を目指す。LIB特性の評価に関しては、より高い電流密度での充放電実験を行い、高出力特性の評価も行う。 今後、電気化学会、フッ素化学討論会、炭素材料学会などで成果発表を行う予定である。また、フッ化鉄-炭素コンポジットの作製と電池特性に関する論文発表を目指す。これらにより、より広く本研究成果を公表し成果に対する議論を深め、今後の研究展開への一助とする予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症対策により、予定していた出張がなくなるなどし、予算の支出に変更があったため次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、成果発表にかかわる旅費などとして使用する予定である。
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