2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K05631
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤本 和士 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70639301)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分子動力学計算 / 破壊の溶媒効果 / PMMA / メタノール / 水 / 拡散係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
応力印加下の高分子に溶媒を塗布することで亀裂が走るソルベントクラック現象の分子論を、全原子分子動力学(AA-MD)計算を用いて、明らかにすることが本研究課題の目的である。 令和三年度は、メタノールと水を接触させた状態でAA-MD計算による高分子破壊シミュレーションを行った。メタノール、水、溶媒無しの順で降伏応力が小さく、壊れやすいことが明らかとなった。驚くべきことに、水ですら降伏応力が下がった。この事実を確かめるために、PMMAの水、メタノール中における液浸引張試験を行ったところ、実験的にもメタノール、水、溶媒無しの順で降伏応力が下がることが明らかとなった。MD計算の解析から、溶媒が接触した高分子は接触していない高分子に比べて動きやすいことがわかった。これにより、降伏応力が下がり壊れやすくなったと考えられる。 さらに、ソルベントクラック現象を解明するためには溶媒の拡散についても検討をしなければいけない。Marrink-Berendsen法やWoolf-Roux法など位置に依存した拡散係数を求める手法がある中で、我々も位置に依存する拡散係数を求める方法を提案している。位置依存の拡散係数の値がMD計算の計算条件で変わることが明らかとなったため、その解明を行った。Ewald法を用いた場合のMD計算では、重心の運動量を0にする必要がある。重心の運動量を0にする頻度(tau)により、位置に依存した拡散係数の値が変わることを理論的に突き止めた。また、最適なtauを決めるガイドラインを示すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶媒が接触した際の降伏応力が下がることを、計算および実験から示すことができた。MD計算の解析により、降伏応力が下がる原因が溶媒接触による高分子鎖の運動性の増加にあることを突き止めた。本成果は、国内学会にで報告している。 さらに、MD計算による位置に依存した拡散係数を求める理論的考察も行い、査読付き論文へ受理されている。 以上の結果から、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られたMD計算の知見は昨年度作成した、小規模系の結果である。実験的にも降伏応力が下がることは確認されているため、MD計算の結果は定性的な議論可能であるが、定量的な議論には疑問が残る。そのため、同時並行で進めていた大規模系を用いた破壊シミュレーションを実施する。また、降伏応力が下がる原因が溶媒接触による高分子鎖の運動性の増加であることは明らかとなったが、溶媒種の違いによる運動性への影響は未だ解明されておらず、更なるメカニズム解明を行う。 拡散係数については理論的検討が済んだため、本年度は高分子中の溶媒分子の拡散を検討する。
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Research Products
(12 results)