2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of low-temperature flow of biodegradable block copolymers under pressure
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20K05633
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷口 育雄 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (30314305)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 圧力可塑性高分子 / 相転移 / ブロック共重合体 / 生分解性高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
圧力変化によって、可逆的なナノ構造変化により相分離状態-相溶状態間を相転移する高分子多相系はバロプラスチックと呼ばれている。本研究では特に、加圧により固体(相分離)状態から流動(相溶)状態へ相転移するバロプラスチック・ブロック共重合体の化学構造と加圧流動メカニズムとの相関について研究する。このようなバロプラスチックは、室温付近で加圧成形できる。一般的な熱可塑性高分子は、溶融成形によって成形加工されるが、加熱時の高分子鎖の熱分解がリサイクルを妨げる原因となっている。これと比較して、低温成形可能なバロプラスチックは、省エネルギー成形(CO2排出低減)が可能であり、かつ高分子鎖の成形時の分解を抑制することができるため、リサイクル性が高い。よって、サスティナブルな高分子材料として期待されている。 本研究では、MITのMayesらによって導出されたCompressible Regular Solution (CRS) modelを用いて、加圧流動が期待される高分子の組み合わせを探索し、圧力誘起相転移が期待されるブロック共重合体を種々化学合成する。ここで、ソフトセグメントとしては、ガラス転移温度が室温よりもかなり低いポリカプロラクトン(PCL)誘導体(-30°C未満)などを、ハードセグメントとしてガラス転移温度が室温以上のポリ乳酸(55°C)を対象としている。得られたブロック共重合体の圧力応答性を実測し、理論的かつ実験的に圧力誘起相転移を支配する熱力学的パラメータを決定した。しかしながら、ブロック共重合体の構造と流動性の相関についてはこれまで全く検討されていない。そこで、圧力誘起相転移による加圧流動を、キャピラリーレオメーターを用いて定量的に評価してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MITのMayesらが考案した高分子二相系のCRS modelについて、組成で二次微分した式は温度と組成の関数となる。ここで、密度や溶解度パラメーターは温度によって決まる。ある温度でこの値が0となると組成の二次方程式となり、0から1の範囲に解を与える場合に、その点がスピノーダル点となる。これによりスピノーダル曲線が得られるため、相図がupper disorder-to-order transition(UDOT)となる場合に圧力誘起相転移が期待できる。 昨年度は、poly(trimethylene carbonate) (PTMC, ガラス転移温度 -20°C)とpolylactide (PLLA)のブロック共重合体(PTMC-b-PLA)について、CRS modelを用いてスピノーダル曲線を得る検討を行った。その結果、173°Cを上限とするUCST型の相分離曲線を有することが予測さ、50 MPaの加圧下ではPLA組成が50 wt%のシンメトリックなブロック共重合体は、40°Cで粘度が急激に低下(流動)することがわかった。これは、加圧下で相分離(固体)状態から相溶(流動)状態へナノ構造が変化した結果であると考えられる。 今年度は、PCLにアルキル鎖をグラフトしたPCL誘導体とPLLAのブロック共重合体についてCRS modelを用いて相図を予測した。例えば、メチル基を導入した場合は167°Cを上限とするUCST型の相分離曲線となり、またCRS model右辺第3項も常温付近ではマイナス値となるため、圧力誘起相転移が予測された。そこで、これらのブロック共重合体を合成して熱物性や低温流動性を検討した。PTMCと比較して、PCL誘導体はガラス転移温度が-50から-30°Cと低いため、同じ圧力下で流動温度がより低い35°C付近で押出成形が可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、CRS modelによって圧力誘起相転移が予測されたPCL誘導体-b-PLAを合成し、その加圧下での相転移による流動性変化を検証した。これまでの検討結果と併せて、ソフトセグメントであるPCL誘導体のガラス転移温度が低いほどCRS modelから予測されるUDOTの上限臨界温度が低くなった。そして、加圧下での流動温度も低くなることがわかった。このように、上限臨界温度が成形性に影響を与えるパラメーターの一つであった。しかしながら、メチル基を2位に導入したPCL誘導体と4位に導入した同誘導体では、CRS modelを用いた相図の予測では、group contribution法によってsolubility parameter、reduced density、およびcoefficient of linear expansionなどの各パラメーターを決定するため、同様の結果となる。しかしながら、2位に導入したPCL誘導体とPLLAのブロック共重合体の方が同一分子量や組成の場合、流動温度が低くなった。このように、CRS modelは圧力相転移を示す高分子ペアを予測するために用いられているが、必ずしも化学構造と低温流動性を検証できるものではない。さらに、これまでAB型ジブロック共重合体のみの検討であったが、ABAトリブロック共重合体や、星型テトラブロック共重合体では同じ分子量や組成でも低温流動性や成形体の力学物性が異なることがわかってきた。これら、化学構造や分子構造と圧力誘起相転移との相関について、さらに検討を重ねていく。
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Research Products
(4 results)