2020 Fiscal Year Research-status Report
ペロブスカイト量子ドットの架橋型高次構造による励起状態制御とLEDの高性能化
Project/Area Number |
20K05639
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
千葉 貴之 山形大学, 有機材料システム研究推進本部, 助教 (20751811)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ペロブスカイト / 量子ドット / LED / 界面制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペロブスカイト量子ドットは半値幅の狭いシャープな発光スペクトルを示すことから、高精細なディスプレイ製品に応用することができる。本年度では、配位子置換や金属塩ドープによる青色ペロブスカイト量子ドットの開発、二次成長法を利用した極めて高い分散安定性を有するナノ結晶の開発を実施した。 1.剛直な骨格のアミン系二座配位子を用いた青色ペロブスカイト量子ドットLED:既存の長鎖アルキル配位子とは異なるアダマンタンジアミンを量子ドット表面に被覆することで、置換前よりも2倍の発光量子収率を示し、純青色領域で世界最高水準の外部量子効率 1.1%を達成した (Adv. Opt. Mater. 2020, 8, 2000289.)。 2.金属塩ドープを利用した鉛置換技術の開発とLED応用: 現状のペロブスカイト量子ドットには特定有害物質である鉛が含まれており、低毒性元素を利用した環境調和型ナノ結晶の開発が強く望まれている。そこで、鉛と同程度のイオン半径を有するランタノイド系元素に着目し、鉛置換を検証した。合成した量子ドットに塩化ネオジムを加え、トルエン中室温下で撹拌することで、5%の置換率と発光量子収率の向上に成功した (ACS Appl. Mater. Interfaces 2020, 12, 53891.)。 3.ナノ結晶の二次成長法による分散安定性とLED特性の両立:ペロブスカイト量子ドットは、表面配位子により分散安定性が大きく影響を受けることが知られている。通常、配位子の密度を下げることで、数時間程度で量子ドットが析出し、分散安定性が低くなる。本研究では、合成した量子ドットに再度前駆体を加え、比較的温和な条件で撹拌することで、二次成長することで、6ヶ月以上の高い分散安定性を示すことを明らかにした( ACS Appl. Mater. Interfaces 2020, 12, 45574.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオン性のペロブスカイト量子ドットは、分散溶媒や配位子が限られることから、既存の金属カルコゲナイド量子ドットや有機ELとは異なるアプローチに基づいたデバイス開発指針が必要である。 本年度は、青色ペロブスカイト量子ドットLEDの高性能化を企図して、配位子置換や金属塩ドープを重点的に検証した。現状の青色ペロブスカイト量子ドットLEDの発光特性は緑や赤色領域よりも低い水準に留まっている。混合ハロゲン組成の青色ペロブスカイト量子ドットCsPb(Cl/Br)3は、緑や赤色よりも深い価電子準位を有するため、隣接層からのホール注入が困難である。また、塩素アニオン欠陥によるトラップ準位が非放射失活を促進させ、発光量子収率が低下することが知られている。そこで、従来の長鎖アルキルタイプの配位子とは異なる剛直なアダマンタンジアミン配位子を用いることで、青色ペロブスカイト量子ドットの非放射失活を抑制し、LEDの高性能化を達成した。また、鉛と同程度のイオンサイズを有する塩化ネオジムをドープすることで、鉛の含有率を5%削減し、80%を超える発光量子収率を示す青色ペロブスカイト量子ドットの開発に成功した。さらに、合成後のペロブスカイト量子ドットを臭化鉛、アルキルアンモニウム塩などの前駆体と反応させることで、量子ドットを二次成長させる手法を開発した。二次成長した量子ドットは配位子とより強い結合を形成することで、分散安定性が大幅に向上することを明らかにした。以上のことから、現在までの研究進捗状況は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、ジアミン系配位子を活用した量子ドット間の架橋化と高次集積化を進める。これまでに、アルキルジアミンをペロブスカイト量子ドットに添加することで、上層塗布溶媒に対して不溶性を示すことから、量子ドット間における架橋構造の形成が示唆されている。今後は、ペロブスカイト量子ドット薄膜の発光特性と不溶化を両立し、LEDに応用する。また、エネルギー移動を利用したペロブスカイト量子ドットLEDの開発も予定通り進める。
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