2020 Fiscal Year Research-status Report
有機フレキシブルデバイスに向けたダメージレスかつ緻密な印刷バリア封止構造の開発
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20K05640
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
硯里 善幸 山形大学, 有機材料システム研究推進本部, 准教授 (80570134)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バリア構造 / VUV / 緻密化 / 膜組成 / 残留水素 / モルフォロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
有機デバイスは水蒸気に対して敏感に劣化するため、フレキシブル化に対応した水蒸気バリア構造が必要である。特にOLED(有機EL)では、真空成膜による無機膜とウェットコートした有機膜の積層構造が用いられている。本研究では無機膜もウェットプロセスにより成膜することで、全印刷可能な封止構造を達成する。ウェットプロセスによる無機膜は疎な膜であるため、水分子が容易に通過してしまうが、本研究では低温・不活性雰囲気下・真空紫外光(VUV:172nm)を用いることでσ結合を直接切断、膜を再構築・緻密化することが特徴である。本研究成果はバリア技術を必要とする他の広い産業にも用いることが可能な技術である。 今年度、バリア膜として機能するPHPS(SiN)層の高密度化ならびにその分析から緻密化のメカニズムの解明を行った。PHPSはSi-Nを主骨格とするポリシラザンの一種であり、VUV光によりSi-H, N-H結合が切断され、SiNを主成分とする緻密膜が得られる。本反応は光反応であるが、温度依存性を確認した。温度として室温~120℃まででVUV光緻密化の影響を確認したが、ほとんど違いがなかった。緻密化プロセスにおいては原子の再配向も重要であると考えていたが、今回の温度領域では効果は得られていない。また緻密化メカニズムを、FT-IR, XPS, SIMSの分析から明らかとした。①膜組成、②残留水素、③モルフォロジーの3点が重要である。Si-H,N-HのVUV光切断反応は、比較的速い反応である。しかしながらPHPSの172nmに対する吸光度が高く、膜内部まで光が侵入しづらい。それにより表面~100nmは特に緻密化が進行する。③モルフォロジーは膜内に存在するフリーボリュームの低減であるが、非常に遅い過程である。更に高いバリア性能を目指すために、これらに着目し解決を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R2年度では、加熱効果、メカニズムの解明を予定しており、計画通り進捗した。特にメカニズム解明では、緻密化プロセスが想定よりも複雑であったが、①膜組成、②残留水素、③モルフォロジーの3点から解析した。D-SIMS分析などを用い、残留水素の膜方向への深さプロファイルが得られ、詳細にメカニズムが明らかとなった。また加熱効果は測定した温度域で依存性なく、本緻密化反応は純粋な光反応であることも明らかとした。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度は、応力緩和層に着目する。すでに応力緩和層におけるシリコーンゲルを変えることでバリア性能が変化することが分かってきており、そのメカニズムと方向性を明らかとする。また水蒸気透過率(WVTR)測定は高価であったため、測定数が少なくVUV光照射条件とWVTRの関係性把握ができていなかった。R2年度末に水蒸気透過率測定装置を導入したことから、R3年度はVUV照射条件とWVTRの関係性を明らかとし、上記応力緩和層との最適化により、WVTR<1x10-4 g/m2/dayのバリア性能を目指す。
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Causes of Carryover |
R2度使用しなかった10,680円に関しては、R3年度の物品費(消耗品費)とする計画である。
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Research Products
(4 results)