2021 Fiscal Year Research-status Report
有機フレキシブルデバイスに向けたダメージレスかつ緻密な印刷バリア封止構造の開発
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20K05640
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
硯里 善幸 山形大学, 有機エレクトロニクスイノベーションセンター, 教授 (80570134)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バリア構造 / VUV光 / ウェットコート / ハイバリア |
Outline of Annual Research Achievements |
有機エレクトロニクス分野だけでなく、広くバリア技術が求められている。ハイバリアが必要な分野では、無機膜を真空成膜(スパッタ、CVD法等)にて得るのが一般的である。真空成膜では、コストが高く、加えて材料利用効率、エネルギーの観点にも課題があり、ウェットプロセスによるハイバリアの達成が望まれている。 当研究室ではPHPS(ポリシラザン)をウェットコート後、窒素下、VUV光(λ=172nm)により光焼成することで、緻密なSiN膜を形成することを見出しており、本SiN層をハイバリア層として評価している。昨年度、VUV光反応過程の詳細を明らかとしてきた。この成果は本年度ACS Appl. Nano Mater. 4, 10, 10344-10353 (2021)にて報告した。 今年度は、ウェットコートによるハイバリア構造の性能向上を目指した。バリア層としてVUV光により緻密化したPHPS層を用い、応力緩和層(兼平坦化層)としてPDMS(ポリシロキサン)を用いた。PDMS/PHPSの1ユニットを形成したバリア構造では、水蒸気透過率WVTR=2x10-4g/m2/dayを達成し、3ユニット(計6層)では、水蒸気透過率WVTR=5x10-5g/m2/dayを達成した。本性能は、ウェットコート法で形成したバリア膜としては、報告されている中で最も高い性能である。VUV光によるPHPSの緻密化には、VUV光量の最適点があることに加え、その膜厚にも最適点が存在する。その理由に関しても、電子顕微鏡画像などから、明らかとしている。現時点では、膜の緻密化だけでなく、フィルム基材上の異物によるバリア欠陥形成が、バリア性能向上の妨げになっていると推測しており、2022年度はバリア欠陥抑制にも注力する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プログラムでは、非常に高い目標設定(水分透過率<10-5g/m2/day)を行っている。今年度の達成性能は5x10-5g/m2/dayであり、約一桁の性能向上を達成した。加えて本性能は世界最高性能であるため、順調に進展を選択した。来年度、最終目標値を達成し、世界最高性能を更新したい。
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Strategy for Future Research Activity |
バリア性能は、複数の要因により低下する。膜の緻密性だけでなく、フィルム基材上の異物(ゴミ・付着粒子)でも、性能劣化する。現時点では、このような異物によるバリア欠陥により性能劣化しており、膜の緻密性による本来のバリア性能が十分に発揮されていないと推測している。膜の緻密性だけでなく、バリア欠陥抑制により、最終目標値(水分透過率<10-5g/m2/day)の達成を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ情勢により、学会参加がWebに切り替わり、旅費を消費することがなかった。また分析費用として計上していた予算(その他)が、分析を行わなかったため、繰越した。繰越した費用に関しては、分析費、物品費として使用する予定である。
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