2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of high-performance semiconductor molecules utilizing molecular and electronic skeletons of phenacenes
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20K05648
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡本 秀毅 岡山大学, 学術研究院自然科学学域, 准教授 (30204043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山路 稔 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (20220361)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フェナセン / 有機半導体 / 光化学反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)高移動度有機FET材料の合成:ヘテロ環縮合多環芳香族化合物を用いて極めて高い電荷移動特性を示す材料が報告されたこと(J. Hanna, Nat. Commun. 2015, 6, 6828)をふまえて,分子長軸方向にフェニル基と長鎖アルキル基を有する機能化[n]フェナセン(n = 4-6)を,光反応をキーステップに用いて簡便に合成した.新規に合成した[n]フェナセン類を用いた薄膜FETデバイスはp型特性を示し,比較的良好なキャリア移動度μ(10^-1~10^0 cm2 V-1 s-1のオーダー)を持って駆動することを確認している. (2)ジベンゾ[n]フェナセンの電荷効果トランジスタ特性:ジベンゾ[n]フェナセンDBnP(n=5-7)の単結晶X線回折より結晶構造を決定し,その結晶構造をもとに分子間の電荷移動積分やホール移動度を見積もった.三種のDBnPのうち,DB6Pが最もFET材料として優れていることを明らかにした.また,FET特性の温度依存性を検討した結果,C2h対称の分子構造を持つDB6Pにおいて結晶性の良さを示唆するトラップ状態密度分布が得られた. (3)イミド官能基化フェナセンの合成:イミド官能基化フェナセンがn型特性を有することをふまえ(Y. Guo, RSC Adv., 2020, 10, 31547),分子両端に電子吸引性のイミド基を有する[5]フェナセンを合成した.一般に,フェナセンは蛍光効率が悪いことが知られているが,この化合物は比較的強い青色の蛍光を発することを見いだした.次年度に,発光性の有機半導体としてのポテンシャルを検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェナセンπ電子骨格の電子特性を利用して,高性能有機物半導体を開拓するにあたって2021年度はフェナセンの官能基化によるFET材料の構築およびπ系拡張の効果の詳細を検討した.得られた主な成果は以下の通りである. (1)高度に官能基化されたフェナセンを構築するために,ビルディングブロックの効率的合成とフェナセン骨格への変換を検討し対称な構造を有するフェナセンおよび非対称な構造を有するフェナセンを効果的に合成する手法を構築できた.このプロトコルにより今後,種々のフェナセン骨格の系統的に合成することが可能になると考えられる. (2)フェナセンのπ電子系を拡張したジベンゾフェナセンのFET挙動の詳細について検討した結果,C2h対称の多環状芳香族の構造がC2vの構造に比べてより高いFET性能を実現できることを示した.この結果によって,π電子骨格の特性だけでなく分子の対称性に基づく固体状態のパッキングを制御することが高性能のFET材料を構築するためのあらたな指針となり得る. (3)従来,対称に官能基化されたフェナセン分子に基づくFET材料を構築してきたが,今回新たに非対称に官能基化されたフェナセンを合成し,FET特性を検討した.これらの新規フェナセン分子はp型FETの活性層として作動することを見いだし,非対称フェナセンを用いることで新しい電子材料を開拓できるきっかけをつかむことができた.2022年度はこの知見を基に新たなフェナセン分子の設計,合成,およびFET特性評価を進める.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降は,当初計画した光反応による機能化フェナセン類の合成とFET特性の評価の方針に従って,より高性能なFET材料の構築を継続して検討する. (1)機能化したフェナセン類の合成を継続して行う.特に非対称に官能基化されたフェナセン構築のプロトコルが得られたことから従来にない分子構造を有するフェナセンを設計し合成する.また,申請段階で計画した大環状縮環芳香族の合成も行う予定である.フェナセンの電子的特性は電子スペクトルの観測と理論計算を併用して解析する. (2)新規フェナセンを用いるFETデバイスの作成と動作特性評価を行う.蒸着により薄膜FETデバイスを作成する.また,フェナセンの単結晶が得られる場合には単結晶FETデバイスを作成し,特性評価を行う.得られる結果をデバイスの最適化と分子の再設計へフィードバックさせ,高性能FETの構築を検討する. (3)これまでのフェナセン合成の過程で,発光特性を有する誘導体も見いだされた.発光特性とキャリア移動特性を合わせ持つ分子は新たな発光材料として求められていることから,合成するフェナセン類のphotoluminescence特性に関しても検討する予定である.
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染対策のため参加した学会がオンライン開催となったことと,予定されていた研究会が中止となった.このため,2021年度に計画していた旅費の執行がなくなったことから次年度使用額が生じた.次年度使用額は2022年度に旅費と消耗品に充当して執行する計画である.
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