2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of electrochromic devices with high durability, high coloration efficiency and high memory indication
Project/Area Number |
20K05649
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
田原 弘宣 長崎大学, 工学研究科, 助教 (80631407)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | レドックスイオン液体 / エレクトロクロミズム / ビオロゲン型イオン液体 / ピリジニウム型イオン液体 / カルバゾール / フェロセン |
Outline of Annual Research Achievements |
エレクトロクロミック(EC)物質は、酸化還元反応によって色が変わる物質として、光化学的あるいは電気化学的な酸化還元反応を分光学的に定量追跡する用途に用いられる。セルを構成すれば電圧印加で色を変えることが出来るため、ディスプレイ材料としての用途も期待されている。我々はこれまでに、EC物質であるビオロゲン型イオン液体(VILs)と酸化還元補償物質としてフェロセン型イオン液体を用いて、高い着色効率でサイクル耐久性が1万回以上のECデバイスを実現した。これは、VILsの高い粘度による酸素の拡散を抑制(水中の酸素の拡散係数に比べて少なくとも1000倍小さい)してフェロセンの分解速度を遅くする効果によるものと推察される。さらに、着色/消色プロセスが拡散律速であることが申請者の研究で明らかになっており、VILsの粘度が高いことで、電源を喪失しても表示が消滅しないメモリー性にも優れていることが分かった。 本研究では上記のイオン液体の優れた性質を生かすため、ビオロゲン型イオン液体や別種類のEC特性を有するイオン液体を活用して、①高い着色効率、②高いサイクル特性、③電源をOFFにしても表示が持続する、3つの観点で優れたECデバイスの実現を目指す。①について、着色を担う物質としてカソード材料であるEC特性を有するイオン液体の他にアノード材料も着色を担わせることで実現が可能である。また、③についてはアノード物質とカソード物質を互いに混合させないことで実現可能である。本年度は②の実現のために、実験条件の検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,前年度で赤色を実現できなかったピリジルピリジニウムの基礎的な電気化学実験と,目標②ECデバイスの着色効率の向上狙って,酸化還元活性イオン液体であるカルバゾールとビオロゲンを混合させたエレクトロクロミックイオン液体を用いてECデバイスを試作した。 ピリジルピリジニウム型イオン液体を無希釈無溶媒条件にてマイクロ電極でCV測定試みたが,解析可能な波形を得ることができなかった。これはピリジルピリジニウムの還元によって被検液が電気的中性となることでイオン伝導性が失われることと関連があるように考えたが,詳しい原因はつかめなかった。 カルバゾールを連結させたイミダゾリウム型イオン液体とビオロゲン型イオン液体をモル比で1:1に混合させたECイオン液体を用いてECデバイスを試作した。面積を規制したITO基板の上にECイオン液体を塗布し,もう一つのITO基板で挟んでECデバイスを組んだ。ECデバイスはサイクリックボルタンメトリー(CV)とクロノアンペロメトリーによって評価した。このセルでは,アノードで生成するカルバゾールの酸化体とカソードで生成するビオロゲンの還元体による光吸収の重なりによって,着色効率が向上することを確認できた。さらに,カルバゾールの酸化体による近赤外域の吸収も見られ,可視~近赤外域の幅広い波長範囲で光吸収を起こすブロードバンドなECデバイスとして機能することが分かった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度までは,タイトルに掲げている「高耐久」・「高着色効率」・「高いメモリー性」のうち,着色効率とメモリー性を向上させることに成功したので,2022年度は高耐久性について検討を行う。2021年度での予備検討において,多数回の酸化還元サイクル実験を進めていると,カルバゾールとビオロゲンを用いたECセル内に微小気泡の生成を確認した。これは,気温や気圧の変化によるものの他,長時間の酸化還元副反応生成物(カルバゾールの酸化カップリング)による水素ガスの可能性もある。そのため,我々が以前に取り組んだフェロセンとビオロゲンの混合イオン液体によるECセルとの比較や,フェノチアジンなどのアノードEC材料との複合イオン液体を試し,「高耐久」・「高着色効率」・「高いメモリー性」を持つECデバイスの開発を行う。
|
Causes of Carryover |
ECデバイス耐久試験のためのファンクションジェネレーターと簡易データロガーを別予算によって都合つけることができたため,2021年度予算に余剰金が生まれた。そのため,2022年度にはその余剰金を利用して,エレクトロクロミックイオン液体の合成をより効率的に遂行するために必要な真空乾燥機の購入に充てる。
|
Research Products
(13 results)