2020 Fiscal Year Research-status Report
Developments of functions in solid-state molecular rotors and extension of them to topological chemistry
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20K05650
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
瀬高 渉 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (60321775)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分子機械 / 固体分子ローター / 固体NMR / 誘電緩和 / ダイポールモーメント / 固体有機化学 / 物理有機化学 / 有機ケイ素化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、かご型分子骨格の内部にπ電子系を回転子として架橋した化合物を「分子ジャイロコマ」として合成し、固体分子ローターとして固体内部の回転子の分子運動観察とその機能利用を研究対象としている。今年度は以下の成果を学術雑誌で発表した。 1,2-ジフルオロベンゼンを回転子とした分子ジャイロコマを合成し、固体状態におけるベンゼン環の回転を固体NMR解析により明らかにした。さらにこの回転子はダイポールモーメントを有するため粉末の誘電緩和の観察に成功し、その分子運動が固体NMRの結果と一致することを確認した。つまり、固体内部のダイポールの回転を固体NMRと誘電緩和の両面から明らかにした。この成果は有機化学の専門誌J.Org.Chem.に掲載された(DOI: 10.1021/acs.joc.0c02571)。 また、ベンゼン環を回転子とするジャイロスコープ様の分子の回転子の運動を固体NMRで詳しく解析し、この成果はChemistry雑誌の特別号に掲載された(DOI: 10.3390/chemistry3010004)。 さらに、極性回転子としてフランを回転子とした分子ジャイロコマを合成し、固体中の分子運動観察を固体NMRで調査した。しかしフランの2,5位の結合のなす角が180°よりかなり小さいため、かご骨格が変形し、回転運動を示さないことを明らかにした。対応するチオフェン体が回転運動を示すことを考えると興味深い構造化学を明らかにした。この成果は、Chem.Lett.誌に掲載された(DOI: 10.1246/cl.200533)。 一方、トポロジー化学への展開に関しては、当該研究の実験を進め、予備的な成果を学会発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果を学術雑誌で公表することができた。さらに、新たな取り組みに関しても、学会発表可能な成果にまとまってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
固体分子ローターの機能性に関する成果の論文投稿を進める。トロポジー化学に関しての成果について、完成度が高くなるよう仕上げていく。
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Causes of Carryover |
民間財団助成金(R2-R3年度 村田科学技術財団研究助成(研究代表者 瀬高 渉)「2軸性有機極性分子ローターの合成と固体誘電機能開発」)に採択され、支出の大部分をこの助成金から執行したため、執行額が当初予定より減少した。また、コロナ禍のため、学会がすべてオンラインで実施され、旅費の支出がなかった。次年度は、外部資金による研究助成の予定がないため、次年度交付分とともに適切に執行させていただきたい。
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