2020 Fiscal Year Research-status Report
Synthetic research of luminescent dyes for application to high-performance organic light-emitting display devices
Project/Area Number |
20K05651
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
西田 純一 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (70334521)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 円偏光発光材料 / 熱活性遅延蛍光 / 分子内電荷移動発光 / フタルイミド / アントラセン |
Outline of Annual Research Achievements |
高効率発光や円偏光(CPL)、熱活性遅延蛍光(TADF)を獲得するため、ドナー-アクセプター(D-A) 型化合物のD-A共役部の距離や三次元的な配置を工夫した化合物の合成を進めている。これまで一次元方向に双極子モーメントがそろった集合体を与えるD-A 型のフタルイミド(PI)化合物の開発に成功しており、これらの研究を継続している。二重結合や三重結合を導入している直線構造を持つ共役系化合物の合成を行っている。またPIユニットを他の共役システムと組み合わせることで、双極子モーメントの高次元化を目指している。またこれらの化合物を発光材料として利用するだけでなく、光に敏感なセンサー機能を持つ電界効果トランジスター(FET)への応用展開も現在進めている。 PI化合物以外の分子システムも展開しており、三次元構造を有する光学分割可能なビアントラセン化合物の合成に成功している。この研究においては、CPLの評価や、FETを作成し、薄膜の電荷輸送特性の評価も行っている。さらに光反応を利用した1,3,6,8-位を構造修飾したフェナントレンや9,10-ジシアノフェナントレン化合物を利用した発光材料への展開も行っている。スピロ骨格の導入や縮環構造を持つヘリセン型の化合物の合成検討も行っている。電子受容性部分としてフェナントロリン環を持つ環状化合物の合成も行っており、化合物は多彩である。これらの発光波長制御や発光特性向上を目指した合成、センサー機能特性の評価など現在検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高効率発光を示す三次元的なドナー-アクセプター(D-A) 型化合物の合成を主に行っている。軸不斉を有する化合物として、ビアントラセン型の化合物について研究を行った。アントラセン環の2,6位を共役拡張させた化合物は、優れた電荷輸送性を示す例が知られている。この位置で共役拡張されたアントラセンを縦方向の9位で二量化させた化合物は、十字型の構造を持ち、外側の共役ユニットを含めてエナンチオマー体となる。前駆体としてテトラブロモ置換体を合成し、ベンゼン環などの共役ユニットを導入した化合物を合成した。ジフェニルアミノフェニル基を導入した化合物で光学分割を行うことができた。円二色性スペクトルやCPL特性を調べ、CPL特性においては、10のマイナス3乗のオーダーの蛍光異方性因子を示すことがわかった。この化合物の溶液を用いてFETを作成したところ、10のマイナス5乗のオーダーの移動度であるが、p型半導体として働くことを見出した。 光反応を利用して、フェナントレン誘導体の合成研究を行っている。これまでに1,3,6,8-位の4か所でハロゲン基を導入した化合物の合成を行った。触媒反応を利用して、ビフェニルやジフェニルアミノフェニル基に置換した化合物を合成した。これらの研究と並行して、ジシアノ基を導入している化合物の合成も行っている。このユニットを電子受容性部位として、外側に電子供与性基を導入したD-A型の発光分子を合成した。共役系を伸ばす位置を制御して合成することができ、導入される位置によって発光特性が変化すること確認している。環状化合物としてフェナントロリンを二つ有する環状化合物を合成した。フェナントロリン環に二つ塩素基を持つ原料を合成し、その部位にジフェニルアミノフェニル基に置換することで電子供与部として導入した。この環状化合物においては、溶媒極性による大きな発光色の変化が起きた。
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Strategy for Future Research Activity |
ビアントラセン型化合物の合成研究において、中間体として得られるブロモ置換体は、様々な共役ユニットや官能基を有する化合物に変換可能な化合物である。この4か所のブロモ基は、ハロゲンリチウム交換反応によって、テトラリチウム体を与える。ジアリールケトンと反応させることで、ジアリールメタノール体を与える。この化合物も光学分割を行うことができるが、水酸基などを構造修飾してホストゲスト系の研究に展開させたい。また、PIなどの電子受容性の含窒素複素環を導入し、D-A型の発光材料に展開すると共に、金属塩を捕まえる発光性ホスト化合物への展開も考えている。フェナントレン化合物においては、1,3,6,8-位の内、1,8-位と3,6-位の2か所ずつ異なる共役ユニットを導入できることが特徴である。この系を利用して、電子供与性基と電子受容性基を入れ替えたD-A型の発光性化合物なども合成することができる。また縮環構造の導入や、新しいタイプのヘリセン化合物への変換も可能と考えている。ジシアノ基が導入された化合物においても、大きな縮環構造を有する化合物の合成なども進めている。フェナントロリンを二つ持つ環状化合物の研究においては、アルキルフェニル基やニトロフェニル基などを導入した化合物の合成も進めている。分子を整列して集合化させる工夫を行い、機能化に結び付けたい。環状構造をさらに大きくする工夫や金属塩との複合システムの開発も検討している。
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Causes of Carryover |
今年度購入を予定していた試薬や器具類を次年度に購入することにしたため。
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Research Products
(9 results)