2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Photocatalytic System Enabling Synthesis of Multiple Products from One Photon
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20K05652
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
酒井 隼人 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (60708486)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 一重項分裂 / 二量体 / 励起ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、テトラセン二量体における一重項分裂の逆反応である三重項-三重項消滅あるいはエキシマー形成が生じるため、効率的に三重項励起子が生成できないとされていた。しかしながら、テトラセンアルカンチオールで修飾した金ナノ粒子において高収率で三重項励起子が生成することができた。この結果から分子運動が三重項励起子の高収率生成に関与することが示唆された。そこで、分子運動と一重項分裂の関係性に関して検討した。架橋部位の長さが異なる一連のテトラセン二量体を合成し、一重項分裂を評価した。架橋部位が短い二量体ではテトラセン同士が強く相互作用することにより、一重項分裂が高収率で生じたが逆反応が進行した。これにより、三重項励起子は低収率となってしまった。その一方で、架橋部位が長い二量体ではテトラセン同士は相互作用が弱くなった。これにより逆反応の進行は抑制されテトラセン二量体から定量的に三重項励起子を生成することに成功した。さらに合成したテトラセン二量体を用いて分子運動と一重項分裂の関係性に関しても評価した。その結果、一重項分裂発現後励起状態において分子が運動することで独立した三重項励起子が生成していることが明らかとなった。。したがって、一重項分裂によって三重項励起子を効率的に生成するには、電子カップリングだけでなく各分子が運動できることが重要であることが明らかとなった。さらに一重項分裂の適応範囲を拡大するため、量子ドットに対して修飾したペンタセン誘導体においてエネルギー移動を介した高効率一重項分裂の発現や水中での一重項分裂の発現にも生成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において中心となるテトラセン二量体において定量的に三重項励起子を生成することに成功した。しかしながら、目的である有機反応に展開するためには二量体から生成した三重項励起子を利用することによる一重項酸素の生成に関して現状検討できていない。したがって、この点の解明が必要不可欠であるがまだできていないため、現状進捗状況としてはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、目的である有機反応に展開するために、テトラセン二量体から一重項分裂よって生成した三重項励起子からエネルギー移動を介することによる一重項酸素の生成に関して検討する。評価方法としては、以前検討した方法を参考に、テトラセン二量体を溶解した溶液に酸素を飽和させる。この溶液に光を照射し、一重項酸素の発光を確認する。観測した発光を三重項量子量子収率が既存の物質からエネルギーにより生成した一重項酸素の発光を参照に、一重項酸素効率に関して議論する。また、これまでの経験から酸素や光によってテトラセンは分解してしまう。そこで必要に応じて安定性の高いテトラセンを合成する。一重項分裂よって一重項酸素の効率的生成に関して成功できると、次に目的とする一重項酸素を利用した有機反応に関して検討する。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、本年度、有機反応を検討するためのガラス器具やガス置換のための真空ラインを購入する予定であった。また反応を検討するにあたり一重項分裂発現可能な二量体を大量に必要となるため、増量するための試薬等を購入する予定であった。その検討が次年度となったため、その分が次年度に繰り越されたため使用額が生じた。
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Research Products
(9 results)