2020 Fiscal Year Research-status Report
ダイマー型イオン液体と多価アルコールによる水素結合型イオン液晶複合体の構築と評価
Project/Area Number |
20K05655
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
花崎 知則 立命館大学, 生命科学部, 教授 (80278217)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イオン液体 / 第4級アンモニウム塩型 / ダイマー型 / 溶媒添加効果 / 液晶 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,基本構造としてイオン部位を2個有するダイマー型イオン液体を合成するとともに,これに多価アルコール等の溶媒を添加することで水素結合型のイオン液晶複合体を構築するとともに,その配向制御による低次元伝導性の発現,配向構造の固定化,さらにはキラル部位の導入によりらせん構造を有する液晶相の発現を目指している.目的とするダイマー型イオン液体のカチオン部位には,第四級アンモニウム系イオン液体の代表的なカチオンである,N,N-diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium(以下DEME と略記)カチオンと類似構造を持つカチオンを用いることとした.目的としたダイマー型イオン液体を,以下,diDEMEin-I-mと表記する.ここでmは分子量末端に導入したアルキル鎖の炭素数を示す. 本研究課題開始前にすでに合成に成功していた化合物を含め,これまでに7種類のdiDEMEin-I-m(m=10,12,14,16,18,20,および22)の合成が完了した.得られた化合物について,偏光顕微鏡観察および示差走査熱量測定を行った結果,溶媒を添加していない系ではいずれも液晶相が発現しなかったのに対し,溶媒として水,および多価アルコールとしてエチレングリコールならびにグリセリンを添加した系では,一定のアルキル鎖長を有する化合物において,一定の混合比で溶媒を添加した場合に液晶相の発現が認められた.液晶相を発現した系のうち,いくつかにおいて,2次元NMR測定,およびX線回折測定を行い,それらの液晶相における構造およびその中における溶媒分子の位置の特定に成功した. これらの研究に並行して,当初予定では21年度以降に予定していた,キラリティーの導入についても検討を行った.具体的には,グリセリンのモノアルキルエーテルを添加溶媒とした場合についての検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,2020年度に,「1.第四級アンモニウム系ダイマー型イオン液体の合成と物性評価」,「2.ダイマー型イオン液体への多価アルコール添加による液晶性の付与と各種物性評価」,および「3.相転移挙動におよぼすカウンターアニオンおよび塩添加の影響の検討」を行う予定であった.これらのうち,1.および2.については当初計画に沿って順調に研究を遂行しているが,3.については実施できていない.これは,最初にカウンターアニオンとして用いたヨウ化物イオンにポリヨウ化物イオン(たとえばI3-など)を含む場合,相転移にどのような影響を与えるのかの検討に時間を要しているためである.しかし,現在までに種々の検討を行った結果,ポリヨウ化物イオンの混入を最小限に抑えることができる合成法,ならびにこれを除去する方法等についても一定の知見が得られてきている状況にあり,この点における課題解決の見通しが立ちつつある状況である. こうした問題点があったため,当初計画では2021年度以降に実施予定としていた,「5.キラル部位を導入したダイマーイオン液体の合成と物性評価」,についての検討を前倒しで開始することとした.この点を含めて総合的に判断した結果,上記区分では「おおむね順調に進展している」の評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度において課題となったポリヨウ化物イオンの除去等については,上述の通り課題解決の見通しが立ちつつある状況にあるため,これを最優先課題としてクリアし,2020年度に実施できなかったカウンターアニオンの効果について検討を行う.なお,カウンターアニオンにハロゲン化物アニオンを用いた場合,本研究でも課題となったポリハロゲン化物イオンの存在が種々の物性に大きな影響を与えると考えられる.そこで,当初計画にはなかったが,このポリハロゲン化物イオンに関する考察をさらに進めることとする. これと並行し,2020年度に先行して開始した,「5.キラル部位を導入したダイマーイオン液体の合成と物性評価」についての検討を進める.これらの進捗状況を検討した上で,当初計画として2021年度以降に予定していた,「4.ゲル化などによる液晶構造の固定化と各種物性評価」への着手時期を決定することとする.
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Causes of Carryover |
当初計画で2020年度の直接経費として計上していた1,000,000円のうち,460円が未執行となり,次年度使用額となった.これは,少額であり,研究で使用する試薬・ガラス器具等の消耗品の購入には不十分であったために未執行となったものであり,計画の変更に伴うものではない. この次年度使用額については,物品費として試薬・ガラス器具類の購入に充てる予定である.
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Research Products
(3 results)