2021 Fiscal Year Research-status Report
ダイマー型イオン液体と多価アルコールによる水素結合型イオン液晶複合体の構築と評価
Project/Area Number |
20K05655
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
花崎 知則 立命館大学, 生命科学部, 教授 (80278217)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イオン液体 / 第4級アンモニウム塩型 / ダイマー型 / 溶媒添加効果 / 液晶 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,基本構造としてイオン部位を2個有するダイマー型イオン液体を合成するとともに,これに多価アルコール等の溶媒を添加することで水素結合型のイオン液晶複合体を構築し,その配向制御による低次元伝導性の発現,配向構造の固定化,さらにはキラル部位の導入によりらせん構造を有する液晶相の発現を目指している.目的とするダイマー型イオン液体のカチオン部位には,第四級アンモニウム系イオン液体の代表的なカチオンである,N,N-diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium(以下DEME と略記)カチオンと類似構造を持つカチオンを2個用い,対称型のダイマー構造とした.目的としたダイマー型イオン液体を,以下,diDEMEin-I-mと表記する.ここでmは分子両末端に導入したアルキル鎖の炭素数を示す.前年度までに得られていた7種類の化合物に加え,新たにn=13,15,および17の化合物を合成し,合計10種類の系列化合物を得た.これらに対して多価アルコールとして,それぞれエチレングリコール,1,3-プロパンジオール,およびグリセリンを加えた系について相転移挙動を検討し,アルキル鎖長と液晶相発現との相関に関して一定の知見を得た.また,一部の化合物についてはX線回折測定を行い,その液晶相がおもにヘキサゴナルカラムナー相であることを明らかにするとともに,二次元NMRの測定結果から,添加溶媒分子の位置に関する知見を得,液晶相の構造モデルを構築した. 前年度課題となったポリヨウ化物イオンに関する検討も進め,ポリヨウ化物イオンの含有量を減少させることに成功した.また,溶媒添加により再び増加すること,その増加量は添加溶媒の種類に依存すること,さらにポリヨウ化物イオンが相転移挙動に与える影響についても一定の知見を得た.これらについては現在,さらに検討を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度,懸案となっていたポリヨウ化物イオンに関しての検討が進むとともに,関連する新たな課題が明らかとなった.しかし,それらについても一定の成果を得ることができた,これに関する検討のため,当初予定とは異なる順序で研究を進めてきた.上述の成果の概要では省略したが,上述の成果に加え,キラル溶媒を添加した系における相転移挙動の検討,他のイオン種(NO3-)に関する検討,電位窓の測定などを並行して進めてきており,それぞれ一定の成果を得ることができた.以上のことから,「おおむね順調に進展している」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度において課題となったポリヨウ化物イオンの除去等については,上述の通り順調に課題が解決してきているが,新たな検討課題も浮上したため,その検討を継続して行う.他のイオン種に関する検討は,液晶相発現の可能性が低いことが明らかとなったため,優先順位を下げ,キラル溶媒を添加した系に関する検討などを優先して行うとともに,ゲル化などによる液晶構造の固定化と各種物性評価に着手する予定である.また,これらに並行して電位窓の測定ならびにイオン伝導度の測定などを行い,目的化合物のの物性評価を追加して行う予定である.
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Causes of Carryover |
当初計画で2021年度の直接経費として計上していた1,200,000円に前年度残額の460円を加えた合計1,20,460円のうち,888円が未執行となり,次年度使用額となった.これは,少額であり,研究で使用する試薬・ガラス器具等の消耗品の購入には不十分であったために未執行となったものであり,計画の変更に伴うものではない. この次年度使用額については,物品費として試薬・ガラス器具類の購入に充てる予定である.
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