2022 Fiscal Year Research-status Report
ダイマー型イオン液体と多価アルコールによる水素結合型イオン液晶複合体の構築と評価
Project/Area Number |
20K05655
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
花崎 知則 立命館大学, 生命科学部, 教授 (80278217)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イオン液体 / 第四級アンモニウム塩型 / ダイマー型 / 溶媒添加効果 / 液晶 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,イオン部位を2個有するダイマー型イオン液体を合成するとともに,これに多価アルコール等の溶媒を添加することで水素結合型のイオン液晶複合体を構築し,その配向制御による低次元伝導性の発現,配向構造の固定化,さらにはキラル部位の導入によりらせん構造を有する液晶相の発現を目指している.目的化合物ののカチオン部位には,第四級アンモニウム系イオン液体の代表的なカチオンである,N,N-diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium(以下DEMEと略記する)カチオン類似のカチオンを2個用い,対称型のダイマー構造とした.目的としたダイマー型イオン液体を,以下diDEME-I-nと表記する.ここでIはカウンターアニオンとして用いたヨウ化物イオンを示し,nは分子量末端に導入したアルキル鎖の炭素数を示す.事前に行っていた予備実験の段階も含め,前年度までの研究において,すでに10種類の化合物(In-diDEME-I-10, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 20, および 22)を合成し,これらに多価アルコールとしてエチレングリコール,1,3-プロパンジオール,グリセリン,およびジグリセリンをそれぞれ系統的に添加し,それらの相転移挙動等について検討を行ってきた.その結果,In-diDEME-I-nの末端アルキル鎖炭素数(n),添加溶媒の種類,およびその量と相転移挙動との間に一定の相関を見出すとともに,一部の複合体についてはX線回折測定を行い,その液晶相がColh相であること,および二次元NMR測定により溶媒分子の位置を特定し,液晶相の構造モデルを提案した. 前年度までに明らかとなったポリヨウ化物イオンの存在と,それが相転移挙動に多大な影響を与える点について,必要が生じた再測定を含め,2022年度に集中して検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の研究実績の概要に述べたように,これまでの研究で明らかとなったポリヨウ化物イオンの存在が相転移挙動に与える影響の検討と,その除去法の確立,それにより必要となった,既に得られていたデータの再測定などを前々年度後半より取り組んできた.特に,2022年度はこれらを中心に行ってきたため,当初予定より遅れが生じることとなった.結果として,当初目的の達成に一定のめどは立ったものの,本研究課題の1年間の延長が必要となった.ただし,これらの問題への対策を行いつつ,新たな複合体としてキラルな構造を持つ溶媒を含め,添加溶媒の種類を増やした検討,カウンターアニオンのイオン種を増やした検討,これらの複合体の電位窓の測定なども,同時に進め,それぞれ一定の知見を得ることができていることから,「やや遅れている」との判断とした.
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Strategy for Future Research Activity |
ポリヨウ化物イオンへの対策については一定のめどが立ち,これまでにデータのとり直し(再測定)も含めて検討を進めることができている.この点については2023年度も引き続き継続し,これまでに得られた複合体についてのデータの整理・検討をすすめる. カウンターアニオン種の変更については前年度の報告でも述べたように優先度は下げるものの(相転移挙動に与える影響が比較的小さいことがあきらかとなったため),特定の複合体についてのみ,複数のアニオン種の添加効果の検討を行う.キラルな構造の導入については,これまでの研究結果から溶媒として添加した場合にキラルな構造を持つ液晶相の発現は困難であると予想されるため,末端アルキル鎖にキラル構造を導入した系についての検討を行う. 最後に,液晶構造の固定化については,ゲル化についての検討を進める.現在,市販のゲル化剤を用いた検討をすでに始めている. 最終年度(1年延長したため)となる2023年度においては,以上の点に集中して取り組み,研究成果をまとめ,当初は2022年度に予定していた国内外において開催される複数の学会において発表するとともに投稿論文としてまとめる予定である.
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Causes of Carryover |
2022年度は,前述の通り,本研究課題において問題となったポリヨウ化物イオンへの対策を中心に行った.そのため,すでに得られていたサンプルの精製と再測定が中心となったため,当初予定していた物品費の一部,ならびに成果発表のための費用が残ることとなった.これらは,最終年度に残された実験に用いる物品費,ならびに成果発表のために用いる.
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