2021 Fiscal Year Research-status Report
ナノ構造制御により活性サイトの溶出を抑制したコアシェル型酸素発生触媒の開発
Project/Area Number |
20K05657
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
大野 智也 北見工業大学, 工学部, 教授 (90397365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 慈人 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80756669)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酸素発生反応 / ナノコーティング / ナノ粒子 / 電気化学触媒 / セラミックス |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、複合金属酸化物であるSrTiO3を高性能酸素発生反応(OER)触媒である(Ca,Sr)RuO3(CSRO)粒子表面にナノレベルで均一にコーティングし、OER反応中のRu成分の溶出を抑制する事で、長寿命な高性能OER触媒を開発する。またコーティングに使用するSrTiO3前駆体分子を金属アルコキシド法における加水分解・重縮合反応を制御する事で設計し、前駆体分子の分子設計によるコーティング層の構造制御を実施する。 二年度は初年度に引き続き、様々な金属アルコキシド基を有するSrTiO3前駆体溶液を開発し、研究目標である(Ca,Sr)RuO3(CSRO)触媒粒子表面へのコーティングを実施し、実用材料に対して初年度開発した技術が適用可能であるかを検討した。その結果、CSRO触媒粒子表面に対しても、モデル粒子として利用したSiO2粒子の場合と同様に比較的均質なSrTiO3のコーティングがナノレベルで可能である事を透過型電子顕微鏡などにより確認した。また合成したCSRO-STOコアシェル粒子を電気化学触媒として用いる事で、当初の目的であったRu溶出を抑制出来、長寿命触媒の設計として本手法が期待できることを確認した。 すなわち、二年度の研究目標である、1.異なるアルコキシド基を有するSrTiO3前駆体溶液の開発、2.CSRO触媒粒子表面へのSrTiO3のナノコーティング、3.ナノコーティングよるRu成分の溶出抑制効果の評価についてほぼ達成した。さらに次年度研究で実施予定のSrTiO3コーティング層の微構造評価に必要と考えられる、立体障害効果が異なるSrTiO3アルコキシド前駆体分子の設計に成功し、これによるコーティング層の構造制御が可能である事を、SiO2をモデル粒子とした系で確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した二年度の研究目標である『部分加水分解法などアルコキシド反応の制御技術を用いて、異なる分子構造のSrTiO3前駆体を開発する』について達成しており、さらに最終目標となるCSRO触媒粒子に対しても、前年実施したSiO2をモデル粒子とした実験と同様にSrTiO3をナノコーティング可能である事を示した。またここで作製したCSRO-SrTiO3コアシェル粒子が、酸素発生反応に対して電気化学触媒として有効であり、さらにプロセス中のRu成分の溶出抑制に効果があった事を、電気化学的評価により確認した。 また異なる分子構造を持つSrTiO3前駆体を用いることで、SiO2をモデル粒子とした系において粒子表面の親水基と前駆体分子中のアルコキシル基の反応を制御する事で、SrTiO3コーティング層のナノ構造が制御可能である事を透過型電子顕微鏡などにより確認しており、最終年度の研究計画である前駆体分子の分子設計によるナノ構造の制御の実施に対する準備が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書では最終年度の研究開発目標として、これまでに開発した立体障害効果が異なるアルコキシド前駆体を用いてコーティング層の構造制御をした実用材料を開発し、長寿命かつ高活性な電気化学触媒の開発を挙げている。この目標に対して、既にCSRO触媒粒子表面へのSrTiO3のコーティングは達成しており、触媒の長寿命化に効果がある事を確認している事、またSiO2粒子をモデル粒子とした系で前駆体分子設計によるコーティング層の微構造制御に成功している。そのためこれらの結果をうけ、最終年度では実用材料であるCSRO粒子表面に構造制御したSrTiO3のナノコーティングを達成し、触媒活性と触媒安定性の両立が可能なコーティング層のナノ構造を実験的に探索し、最終目標であるOER活性としてコア粒子であるCSRO触媒の過電圧0.25V以下を維持し、可逆水素電極を基準とした電位1.80 V以下でのRu溶出の抑制、10 mA/cm2を示す電位で20時間保持した後の電位の上昇0.05V以下を達成する。 さらにこれまでの研究結果として解明した、前駆体分子設計によるコーティング層の構造制御について、より系統的な解析を行う事でコーティングメカニズムについても明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、ほぼ全ての学会がオンライン化され、当初予定していた旅費をしよう出来なかった事、また前年度からの繰越分について当初の計画と使用額に差異が生じた。これらの差異は計画どおりに研究成果が出ているため、最終年度の学会活動に必要な旅費として使用する。
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