2020 Fiscal Year Research-status Report
分離・反応における省資源化を目指した層状結晶デザイン
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20K05661
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岡田 友彦 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (30386552)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノシート / 吸着 / フィロケイ酸塩 / 結晶成長 / 水熱合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
層状化合物でおこる特異的な反応(選択的分子吸着や触媒反応など) が、層間を無駄なく使用して進行するような、層状化合物の結晶をデザインすることを目的としている。 本年度はまず、層状ケイ酸塩を対象として、水溶液からの選択的分子吸着の機構を明確にするために、放射光X線や水蒸気吸着試験などを併用して検討した。その結果、層間に予め取り込まれている水分子が規則的な二分子層を形成しており、有機分子の選択吸着では、この水二分子層を切断しながら取り込まれる機構であることがわかった。有機分子の吸着にあたっては、水分子層の切断と同時に、層間から水分子はほとんどが排出されており、水溶液中に存在する有機分子が高密度に層間に取り込まれた。このことから、規則的かつ束縛された水は、層間を無駄なく使用する(有機分子の高容量保持)ことに有効であることがわかった。 並行して、流通系で用いるための層状化合物の結晶デザインについて、水熱反応を利用して、球状シリカ粒子表面において層状化合物を均一に被覆する基礎技術の構築にあたった。その結果、もとのシリカの均一な粒子径分布を維持しながら(相対標準偏差5%以内を維持)層状化合物でコーティングできることがわかり、シリカの粒子径が200~300 nmの範囲では、擬フォトニックバンドギャップが見られた。このコーティング層は薄いために、吸脱着が迅速なクロマトグラフィー担体などの流通系において有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶液からの選択的分子吸着の機構を明確にするために、放射光X線や水蒸気吸着試験などを用い検討した結果、層間に予め取り込まれている水分子が規則的な二分子層を形成しており、有機分子の選択吸着では、この水二分子層を切断しながら取り込まれる機構であることがわかったので、これを原著論文としてまとめ現在投稿中である。 また、流通系で用いるための層状化合物の結晶デザインについては、もとのシリカの均一な粒子径分布を維持しながら(相対標準偏差5%以内を維持)層状化合物でコーティングできることがわかり、シリカの粒子径が200~300 nmの範囲では、擬フォトニックバンドギャップが見られたことについて、原著論文にて公開し(ChemPhotoChem)、オープンアクセスできる状況である。 以上のように、層間を無駄なく使用する(有機分子の高容量保持に有効)技術や流通系に適用できる結晶デザインについて予備検討が順調に進んでいる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
分子の吸着機構や結晶デザインの基本的な検討は、1年目で大きく前進した。今後は、1)層状化合物(現在は層状ケイ酸塩)の種類を広げる。加えて2)工業的応用についてより具体化させ、その応用に適したデザインを提案できるように物質系を広げていく。 原著論文の公開、学会発表、ロビー活動によって、無機材料化学分野や化粧品分野などからの興味や関心が寄せられた。今後は、他機関との連携、産学連携を図りながら、合理的かつ応用性に優れた結晶デザインを進めていく。
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Causes of Carryover |
流通系での吸着評価に関わる備品及び消耗品を次年度に一括して計画し導入するために、当該年度での使用が計画より下回った。次年度は当該年度で導入する予定であった物品類を一括して使用する予定である。
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Research Products
(6 results)