2020 Fiscal Year Research-status Report
シクロトリホスファゼンを核とする無機・有機ハイブリッド多機能化合物の選択的な合成
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20K05665
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
黒星 学 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30242316)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シクロトリホスファゼン / 選択的官能基化 / 多機能性分子の合成 / 有機・無機ハイブリッド化合物 / 含リン化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘキサクロロシクロトリホスファゼンに2当量のチオフェノールと塩基を作用させると,2,2-ビス(アリールチオ)-4,4,6,6-テトラクロロシクロトリホスファゼンが得られた。これに第二の官能基を導入すべく,アンモニア,フェノキシドを作用させると,P-Cl のリン原子と反応し,反応条件に応じてアミンやフェノキシドが2つないし4つ導入された化合物がえられた。一方,別のチオフェノールを反応させると,P-Cl のリン原子だけでなく,P-S のリン原子にも反応し,シクロトリホスファゼン環上でチオフェノキシドの交換反応も起こった。これは,アンモニアやフェノキシドが比較的ハードな求核剤であるため,シクロトリホスファゼンと反応するときも比較的ハードなリン原子上で置換反応が選択的に起こるのに対し,チオフェノキシドは比較的ソフトな求核剤であるため,P-Cl のリン原子よりも P-S のリン原子上で置換反応が優先的に進行したものと考えられる。現在は反応の適用範囲を広げるとともに,様々な求核剤による反応のパターンを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アリールチオ基を二つ gem に導入した2,2-ビス(アリールチオ)-4,4,6,6-テトラクロロシクロトリホスファゼンに二つ目の置換基としてアンモニアを導入したときは,反応溶媒を変えることによって2,2-ビス(アリールチオ)-4,4-ジアミノ-6,6-ジクロロシクロトリホスファゼンや2,2-ビス(アリールチオ)-4,4,6,6-テトラアミノシクロトリホスファゼンを作り分けることができた。フェノキシドを作用させた時も,2,2-ビス(アリールチオ)-4,4-ジクロロ-6,6-ジフェノキシクロトリホスファゼンを主生成物として得た。チオフェノキシドを作用させたときは,第一のチオフェノキシドと同じチオフェノキシドをさようさrセたときは予想通り,2,2,4,4-テトラキス(アリールチオ)-6,6-ジクロロシクロトリホスファゼンが得られたが,最初のとは異なるチオフェノキシドを作用させると,アリールチオ基の交換という予期せぬ現象に遭遇した。この生成物の構造決定に思わぬ時間を要した。また,このことは多種類の置換基をシクロトリホスファゼンに組み込む際には,その導入順を検討することがあることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘキサクロロシクロトリホスファゼンにアンモニアを作用させると,2,2-ジアミノ体や 2,2,4,4-テトラアミノタイのように gem に二つづつアミノ基が導入される。ビスアリールチオ体の場合も,同様の選択性が認められる。一方,ヘキサクロロシクロトリホスファゼンにフェノキシドを作用させると,用いたフェノキシドの当量に応じてフェノキシドが導入され,また,non-gem に優先的に導入される。しかし,アリールチオ基を導入したシクロトリホスファゼンには二つのフェノキシドが gem に導入される。このように,多くの反応点を有するシクロトリホスファゼンに置換基を導入するときは,その順番,反応条件によって,第2,第3の置換基の導入数,位置,立体を制御できる可能性がある。やや絨毯爆撃的な方法ではあるが,様々な置換基を導入して,その制御の様子を明らかにしていく。また,現在は gem- に置換基が入る例が多いが,例えば一つの分子の中に3つの置換基を持つ求核剤を設計して,non-gem-cis 置換体を選択的に合成することを検討する。
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Causes of Carryover |
昨年度は新型コロナの影響もあり,出張がほとんどできなかった。他の大学・研究機関の研究者とは専らリモートで情報を交換した。今年度も今の状況では交通費としての使用は難しいが,その分を薬品や溶媒・シリカゲルなどの消耗品として適切に使用していく。
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