2021 Fiscal Year Research-status Report
Dislocation dynamics and link mechanism of ring crystal in low dimensional conductors
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20K05669
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
坪田 雅功 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (50626124)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 結晶成長 / 結晶核 / MX3 / 転位 / 準安定 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属トリカルコゲナイドMX3(M=Nb, Ta, Mo:X=S, Se, Te etc)は異方的な結晶構造を持ち,擬一次元的な伝導特性を有する単結晶である.そのため,低次元導体特有の現象である電荷密度波はスピン密度波,それらと競合する超伝導との関係に関して研究が進められている.MX3結晶は一軸方向によく成長し,通常,針状結晶として成長するが,2000年頃にリング状やメビウスの輪状の形状を取ることが発見された.しかし,その成長過程に関しては不明な点がいくつか挙げられる.一つは結晶の曲げに関する問題であり,もう一つは結晶端の結合の問題である.そこで本研究では,結晶成長過程のその場観察によって明らかにすることを目的に研究を進めた. 照明やレンズ等の観察系を最適化することで,分解能を上げた観察を実施した.結果,リング結晶成長において,これまで提案されてきたカルコゲンによる液滴が無い環境でもリングの生成を観察した.リング結晶は,針状結晶が液滴との界面張力により表面に付着し,液滴の曲面に沿って成長することで形成することが提案されていたが,昨年度までの研究によって得られた液滴による結晶の分解過程という知見を考慮すると,結晶がリングとして形成するまで維持することが困難であることが見積もられた.この数値計算結果の矛盾に対して,液滴を使用しないリング形成は,新しい知見である.一軸方向にはよく成長する結晶であるが,他の二軸方向の成長速度は遅い.これまでに幅や厚さが大きいリング結晶はいくつも発見されているが,針状結晶の三次元的な成長速度と比較すると,これらはらせん状に成長していることが考えられる.これまでに報告があるZnOのリング結晶は異方性からくるクーロン力によって結晶端が接合していると考えられているが,MX3では電荷の偏りはその構造からも考えにくい.そのため別の結合力を考慮する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度も,2年前と同様に国内の状況が悪く,観察のために外部にある機器を申請して利用することが困難な状況であった.代わりとして,エネルギー分散型X線分析(EDX)やX線回折(XRD)による結晶構造解析を実施した.形成済みのリング結晶を半径r,幅W,高さhで分類し,リング(r>W, h),円筒(h>r, W), 円盤(W=r>h)で分類し,結晶構造を解析した.円盤は円柱やリングより結晶性が悪く,欠陥を多く含むことが予想される. また,リング結晶のその場観察のため,任意の箇所に成長核を形成する原料粉末や原料基板の利用を試みた.これらは針状結晶の初期成長過程を観察する手法として,優位なデータを得られたが,リング結晶自体は観察出来なかった.このことからも単に結晶を成長するだけではリング状ではなく安定な針状結晶となり,リング結晶が成長する合成条件において未解決な点が残ることが明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度より,大学や研究機関への移動も緩和傾向である.この状況が続くようであれば,従来の予定通りに,電子線後方産卵回折(EBSD)による結晶包囲解析によって,針状結晶やリング結晶の結晶面を観察することが可能になると考えている.また,加熱環境による結晶内の転位の変化に関しても,加熱ホルダー搭載の電子顕微鏡を用いて観察が可能であると考えられる.これらの機器を用いた観察は,結晶構造の直接的な観察になり,新しい知見が得られると考えられるため実施予定である. これらの観察を当初の予定で進められなかった代わりに実施した,その場観察や結晶構造解析により,計画書作成時には無かった液滴による分解や液滴無しのリング結晶生成などの知見を得られた.これらを活かし,また解析に関しても既に試みているため,成長機構の解明に必要な結果を得られれば,その後の進展はスムーズにいくと考えている.
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Causes of Carryover |
当該年度に外部機関にて実施予定であった実験が,国内状況により実施が出来ず,その分の経費を次年度へ持ち越して実施する予定である.
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