2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel synthesis method of nanomaterials using superheated steam and application to secondary battery electrode materials
Project/Area Number |
20K05672
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
露本 伊佐男 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (60282571)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マンガン / 複合酸化物 / 過酸化水素 / ポリ酸 / 水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
固相反応は一般に1000℃近くの高温下で,複数の種類の金属酸化物を反応させて,目的の物質を調製する手法である。本研究では,その高温環境の実現に過熱水蒸気(100℃を超える水蒸気)を用いて,従来試みられていない環境で,試料調製することを目的としている。昨年度に引き続き,石英管,管状炉などを組み合わせた自作の過熱水蒸気による加熱焼成装置を利用し,実験を進めた。 我々はソフト化学的合成法の一環として,金属粉末を高濃度の過酸化水素水と反応させて得た過酸化ポリ酸水溶液を前駆体として,従来よりも低温で,様々な複合酸化物を合成することに成功している。これまでに成功した金属はタングステン,チタン,バナジウム,ニオブである。しかし,電極材料として頻用されているマンガンについても同様の手法で複合酸化物を調製しようとしたところ,金属マンガンの表面に生成している酸化マンガン(IV)の被膜のため,過酸化水素が分解されてしまい,過酸化水素がマンガンを酸化溶解できないという難点があった。新しく過熱水蒸気を用いて,金属マンガン粉末の表面を処理し,酸化マンガン(IV)以外の被膜に変化させたところ,金属マンガンが過酸化水素に酸化溶解し,マンガンが溶け込んだ水溶液を調製することができた。同水溶液を200℃で蒸発乾固したところ,赤色~茶色を呈する粉末が残留し,高酸化数のマンガン酸化物を合成することに成功した。 また,表面に酸化被膜の付いた金属マンガン粉末に様々な処理を試みたところ,500℃の水素中で還元焼成すると,質量が増え,当初の金属マンガンとは異なる粉末X線回折パターンを示すことを見出した。この結果は,金属マンガンが水素を吸蔵することを示唆している。先行研究では,マンガンには水素を吸蔵する性質がないとされていることから,慎重に確認のための実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自作した過熱水蒸気加熱装置を用いて,従来の加熱方法ではうまくいかなかった金属粒子表面の被膜処理を実現することができた。過熱水蒸気加熱装置は,定められた温度の過熱水蒸気を作るための石英管炉,およびその炉で作った過熱水蒸気を流すための石英管炉から構成される独自のものを製作した。この装置を用いて,金属マンガン粒子表面に酸化被膜として生成していた酸化マンガン(IV)を,過熱水蒸気処理で別の被膜に変化させることで,過酸化水素を触媒的に分解しないようにすることができた。これによりマンガンと過酸化水素の直接反応により,マンガンが溶解した水溶液を調製することができた。従来は,酸化マンガン(IV)と過酸化水素の反応と同様に,金属マンガンを過酸化水素に反応させても,過酸化水素が分解されるだけで金属が溶解しなかったものである。この水溶液を出発原料として,新しいマンガン酸化物の合成経路の開拓が期待できる。 また,金属マンガンを使った実験を進める過程で,水素中で金属マンガンを焼成することにより,マンガンが水素を吸蔵する可能性を見出した。慎重に実験を進めているが波及効果の高い新知見となる可能性が高い。
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Strategy for Future Research Activity |
過熱水蒸気を材料合成時の加熱に使用する利点として,これまで,低温で目的物が生成するので準安定相が得られる可能性がある,低温焼成独特の欠陥構造を有するものが生成されるので,従来にない電気的・化学的性質が期待できるなどを挙げていた。今回の成果で,空気中で加熱した場合とは異なる種類の金属被膜を生成することができることも利点として挙げられることがわかった。引き続き,過熱水蒸気を新しい加熱方法として,材料調製に使用し続ける予定である。二次電池の電極材料として,注目されているマンガンを中心に,スピネル型酸化物やその類縁の酸化物の調製を試みる予定である。 また,金属マンガンが水素を吸蔵することを示唆する結果が得られたので,先行研究を確認しながら,水素を吸蔵したマンガンの組成と結晶構造の関係,水素を吸蔵・放出する条件,水素を吸蔵したマンガンの熱的性質などについても並行して実験を進める予定である。
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Causes of Carryover |
計画通りに消耗品を購入したが,消耗品価格が当初の見込みより変動したため,1494円の残額を生じることになった。
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