2020 Fiscal Year Research-status Report
リチウムインサーション電極の反応速度に関する基礎研究
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20K05687
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
有吉 欽吾 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80381979)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リチウムイオン電池 / 電極反応速度論 / リチウムインサーション電極 / 電荷移動抵抗 / 接触抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、リチウムイオン電池の高出力化を目指す上で重要な、リチウムインサーション電極の速度論の解明を目指して、希薄電極法の開発を行い、リチウム・アルミニウム・マンガン酸化物正極の反応抵抗についての解析を行った。 種々の活物質比率で作成したリチウム・アルミニウム・マンガン酸化物正極について、 電気化学インピーダンス測定を行った。その結果、希薄電極においては、2つの反応課程の存在を示唆する2つの円弧がインピーダンスプロットに現れた。さらに高周波数側の円弧は活物質比率を変化させてもその大きさが一定であったのに対し、低周波数側の円弧は活物質比率の減少に伴って大きくなった。このことは、リチウム・アルミニウム・マンガン酸化物に代表されるリチウムインサーション電極においては、高周波数側の円弧に対応する集電体/活物質集合体界面における接触抵抗と、活物質/電解液界面における電荷移動抵抗という2つの抵抗成分で構成されることが分かった。 また活物質の電荷移動抵抗を算出することにも成功し、電荷移動抵抗は活物質粒子の表面積のみに依存し、結晶性といった構造学的因子とは無関係であることを実証した。 以上の結果は、リチウムイオン電池の高出力化にあたっては、活物質の電荷移動抵抗の低減よりも接触抵抗を低減させることが重要であることをを意味しており、リチウムイオン電池の高出力化を目指す上で、リチウムインサーション電極の構造最適化に対する重要な指針が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、リチウムインサーション電極の反応速度を測定することが可能な「希薄電極法」を考案し、活物質としてリチウム・アルミニウム・マンガン酸化物正極をもちいてその有効性について実証した。特に、電気化学インピーダンス測定によって反応抵抗の成分を解析することに成功し、リチウムインサーション電極の反応速度論を理解するための基本的な情報を得ることができた。加えて、リチウムイオン電池の高出力化につながる指針を得ることにも達成し、初年度としては当初の研究計画以上の進捗状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、リチウムインサーション電極の速度論の解明に、「希薄電極法」が有効な手段であることが判明したので、今後も希薄電極法によるリチウムインサーション電極の反応速度に及ぼす因子について検討を行っていく。特にリチウムイオン電池の高出力化にとって、「電荷移動抵抗」とあわせて重要な因子である「固体内Liイオン拡散挙動」について検討を行っていく。具体的には、粒子サイズの異なる活物質において固体内Liイオン拡散挙動がどのように変化するのか?また、固体内Liイオン拡散挙動とリチウムインサーション電極のレート特性との相関関係についても検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
本年度において使用した予算が請求した金額よりも少なくなった理由には以下の2つがある。一つは、新たな実験手法を開発するための資金を計上していたが、予想をはるかに上回って開発が順調に進んだため、当初計画よりも予算を大幅に削減することができたことである。もう一つは、新たに開発した実験手法が、当初予定していた電気化学測定を行うためには不十分であることから、電気化学測定装置の購入を見送ったためである。 翌年度においては、昨年度予定していた電気化学測定装置の購入を計画しており、当初の予定通りの実験計画を遂行するために予算の使用を計画している。
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