2021 Fiscal Year Research-status Report
光合成材料を活用したバイオ光エネルギー変換デバイスの開発
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20K05691
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
永田 衞男 東京理科大学, 工学部工業化学科, 准教授 (00756778)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バイオ太陽電池 / 光化学系1 / アップコンバージョン / 酸化チタン |
Outline of Annual Research Achievements |
化石燃料に代わるエネルギーとして、クリーンかつ無尽蔵である太陽光エネルギーが期待されている。そこで、近年バイオ太陽電池に注目が集まっている。バイオ太陽電池は、光合成生物由来の材料を用い、安価かつ安全に作製可能であり、普及が進めばエネルギー問題と環境問題の両方を解決する可能性がある。 藻類から抽出した光化学系1(PS1)を用いたバイオ太陽電池は、現在のところ光電変換効率が低い。この問題を解決するために、より多孔質な酸化チタン電極を用いることが挙げられる。電極をより多孔質にすることで、比較的大きなPS1複合体の吸着量の増加が期待出来る。さらに光の散乱も増加するため、効率的な光収穫が可能となり光電流の増加が期待される。今回、様々な大きさや濃度のポリスチレンボールを酸化チタン電極と混合し、500度で焼結させることにより、多孔質の酸化チタン電極を作成した。とくにポリスチレンボールを導入する位置を変えることにより、PS1複合体が酸化チタンに吸着しやすいように改良したところ、従来のデバイスの約1.5倍の向上が確認された。 また、酸化チタンペーストに980nm付近を吸収するアップコンバージョン発光体を添加した。このアップコンバージョン発光体はPS1のクロロフィルの吸収体で発光するため、より広範囲の光を吸収できる可能性がある。このアップコンバージョン発光体を導入したバイオ太陽電池のI-V測定の結果、作製したセルの変換効率は、導入してないものに比べ、わずかに低下した。しかしながら、IPCE測定よりUC発光による光電流の存在が確認された。今後、UC発光体の含有量の最適化を行うことで吸収波長を拡大したバイオ太陽電池の作製が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、バイオ太陽電池の開発に向けて、酸化チタンとポリスチレンボールの混合ペーストを用いた多孔質な電極を作製し、光化学系1(PS1)の吸着量の増加や光の散乱を利用することによる太陽電池性能の向上を目指した。5wt%のポリスチレンボールを添加した混合ペーストを用いたデバイスは従来のデバイス(0wt%)と比較して、短絡電流密度(Jsc)と開放電圧(Voc)の向上が確認され、従来のデバイスの約1.5倍の値となった。この向上は、PSI の吸着量の増加だけでなく、散乱光の利用に由来すると考えられる。とくに基板の吸収スペクトルを評価すると散乱性能の向上が確認された。これらの結果から、電極の多孔質化が、PS1の光電流の向上に寄与していると考えられる。また、アップコンバージョン発光体を添加する系も同時進めており、これらを組み合わせることで、吸収波長を拡大したバイオ太陽電池の作製が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、 太陽光の多くを占める近赤外光を利用するために アップコンバージョン発光体を光電極に導入したバイオ太陽電池を進めていく。 現在のところ、アップコンバージョン発光体を導入したバイオ太陽電池では光電変換効率が低下したが 、その一方で電圧値の向上や UC由来の光電流が確認された。光電変換効率が低下した原因はアアップコンバージョン発光体の添加量が過剰であったことが挙げられる。過剰な アップコンバージョン発光体によって生成された結晶欠陥が正孔を捕獲したことで、電流値が低下したため光電変換効率が低下したと考えられる。電圧値の向上は UC発光体を導入したことで p型ドープ効果が生じ、酸化膜中の電子のフェルミ準位が向上したためであると考えられる。また、 IPCE測定では使用した UC発光体の励起ピークと同じ波長で、光電流が確認された。このことから、 アップコンバージョン発光体の導入によってバイオ太陽電池の光収穫が向上したと考えられる。以上の結果から、光電極を作成する混合ペースト内のアップコンバージョン発光体の含有量を調整することで、近赤外光を利用可能とし、光電変換効率を 向上させたバイオ太陽電池の開発が期待できる。
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Research Products
(3 results)