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2021 Fiscal Year Research-status Report

特殊ビリンの生体内検出とタンパク質ラベル化への応用

Research Project

Project/Area Number 20K05701
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

松井 敏高  東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (90323120)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywordsビリン / 蛍光タンパク質 / ヘム代謝 / テトラピロール / タンパク質ラベル化
Outline of Annual Research Achievements

本研究では、ヘム代謝における特殊な生成物(特殊ビリン)を蛍光団とするタンパク質を開発し、特殊ビリンの高感度検出とタンパク質ラベル化技術への応用を目指している。今年度は主に、ビリベルジン(BV)結合型蛍光タンパク質、smURFP、を用いた研究を行った。
まず、天然型BVαの位置異性体であるBVβおよびδの蛍光検出を目指し、smURFPとの反応を検討した。BVβおよびδはsmURFPに速やかに取り込まれたものの、共有結合の形成は見られず、蛍光もほとんど見られなかった。そこで変異導入によってsmURFPの構造を改変し、共有結合の形成と蛍光強度の増強を試みた。ランダム変異を導入したsmURFP遺伝子を、BVβ(またはδ)を選択的に生じる特殊なヘム分解酵素とともに大腸菌で共発現させ、培養プレート上でのスクリーニングを行った。現在までに約24,000コロニーを評価したものの、強い蛍光を発するクローンは得られておらず、より大規模な探索や対象残基を絞り込んだ変異導入が必要と考えられる。次に、smURFPとマイコビリン(結核菌の特殊ビリン)の反応を検討したところ、有意な蛍光が470nm付近に観測された。ESI-MSでは強い酸性条件(pH ~2)においても両者の複合体に相当するシグナルが観測され、共有結合の形成が示された。以上の結果からsmURFPはマイコビリン検出に適しており、今後の構造改変によって実用的なプローブが得られる可能性が高いことが示された。
また、本年度はオルガネラ選択的な亜鉛イオンの蛍光プローブの開発にも取り組んだ。pH依存性の低い低分子プローブを、シグナル配列を含むHaloTagタンパク質に結合させることで、ミトコンドリアや小胞体、細胞質などの遊離亜鉛濃度の決定に成功した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

ビリベルジン異性体の系で、大腸菌コロニーの効率的なスクリーニングを実現できたことは、今後の研究推進に大いに役立つと考えている。大腸菌の膜外へのタンパク質発現にも一部成功しており、今後、大規模スクリーニングによる速やかな機能変換が期待される。マイコビリンに関してはsmURFPと速やかに反応し、複合体から有意な蛍光が観察されたため、smURFPをベースとした実用的なプローブを開発できる可能性は高いと考えられる。また、マイコビリンとsmURFPの結合様式はビリベルジンのものとは大きく異なることも示唆されており、蛍光タンパク質の成熟過程を理解する上でも興味深いターゲットとなる。一方、いまだに実用的なプローブやタンパク質ラベル化技術の開発は実現できていない。
また亜鉛プローブに関する研究では、各オルガネラでの濃度の違いがタンパク質の品質管理機構とも関連していることが示され、細胞生物学的にも有用な情報が得られている。この成果はACS Sensor誌に報告しており、今後のオルガネラレベルでの細胞生物学の発展に大きな寄与があると期待される。
以上の現状を総合的に鑑み、現在までの達成度は「やや遅れている」ものと評価している。

Strategy for Future Research Activity

第一に、smURFPへの変異導入によるマイコビリン複合体の蛍光強度増強を目指す。すでに開発したランダム変異とコロニーアッセイの手法を用い、大腸菌の状態でマイコビリン複合体の蛍光強度変化を検討する。主に結核菌ヘム分解酵素との共発現系の利用を想定しているが、必要であれば細胞外へのタンパク質発現系を用い、外部から添加したマイコビリンを速やかに発現タンパク質に結合させる。また、smURFPと同じくビリベルジンを蛍光団とするmiRFPnanoに関しても同様の検討を行う。
第二に、smURFPとマイコビリンの特殊な結合様式を検討する。まず、プロテアーゼによって断片化した複合体をLC-MSで解析し、色素を含む断片のMSMS解析から結合様式の違いを検証する。実際の構造については、大量調製した断片に対するNMR測定、予想結合部位を改変したマイコビリンの結合解析、複合体の結晶構造解析を組み合わせることで決定を試みる。
その他、未検討の特殊ビリンである黄色ブドウ球菌IsdGのスタフィロビリン(SB)とそのホルミル化体(SB-CHO)について、smURFPやmiRFPnanoとの反応を検討する。また、smURFPとマイコビリンの速やかな結合を利用し、修飾マイコビリンを用いたタンパク質ラベル化反応への応用を目指す。これらは良好な結果が得られたものについて、優先的に研究を進める予定である。

Causes of Carryover

前年度に引き続き、コロナ禍のために旅費への支出がなくなった。また、人件費への支出も難しくなり、一部の実験が遅れたこともあり、購入を考えていた消耗品がほとんど在庫品で間に合ってしまった。次年度は先送りした高額消耗品の購入に充てる予定である。また、遅れを取り戻すために技術支援員を積極的に雇用し、研究の速やかな進展を図る予定である。

  • Research Products

    (7 results)

All 2022 2021

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (5 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] Organelle-Level Labile Zn2+ Mapping Based on Targetable Fluorescent Sensors2022

    • Author(s)
      R. Liu, T. Kowada, Y. Du, Y. Amagai, T. Matsui, K. Inaba, and S. Mizukami
    • Journal Title

      ACS Sensors

      Volume: 7 Pages: 748-757

    • DOI

      10.1021/acssensors.1c02153

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 合成中間体を用いたヘム分解酵素の機能解明2021

    • Author(s)
      松井 敏高
    • Organizer
      令和三年度 新学術領域研究「高速分子動画」シンポジウム
  • [Presentation] 細胞小器官内遊離Zn2+の濃度定量と動態観察を可能とする小分子蛍光プローブの開発2021

    • Author(s)
      小和田俊行, 劉 熔, 杜 雨音, 松井敏高, 水上 進
    • Organizer
      第15回バイオ関連化学シンポジウム
  • [Presentation] 共有結合型蛋白質ラベル化技術を利用した細胞内蛋白質二量化の光制御2021

    • Author(s)
      小和田俊行, 荒井啓介, 吉村彰真, 松井敏高, 菊地和也, 水上進
    • Organizer
      第15回日本分子イメージング学会学術集会
  • [Presentation] Quantitative imaging of labile Zn2+ using organelle-localizable fluorescent probes2021

    • Author(s)
      Rong Liu, Toshiyuki Kowada, Toshitaka Matsui, Shin Mizukami
    • Organizer
      第15回日本分子イメージング学会学術集会
  • [Presentation] Visualization and quantification of labile Zn2+ in the acidic subcellular compartments using a small-molecule fluorescent probe2021

    • Author(s)
      Yuyin Du, Rong Liu, 小和田 俊行, 松井 敏高, 門倉 広, 稲葉 謙次, 水上 進
    • Organizer
      第32回万有仙台シンポジウム
  • [Book] ヘムタンパク質の科学2022

    • Author(s)
      松井敏高、齋藤正男
    • Total Pages
      9
    • Publisher
      (株)エヌ・ティー・エス

URL: 

Published: 2022-12-28  

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