2021 Fiscal Year Research-status Report
環状リガンドの配座制御を基盤としたタンパク質局在の光制御法の開発
Project/Area Number |
20K05702
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小和田 俊行 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40584397)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フォトクロミック / 光応答性分子 / 蛍光イメージング / タンパク質二量化 |
Outline of Annual Research Achievements |
生細胞内におけるタンパク質の局在を可逆的に光で制御することができれば、任意のタイミングかつ特定の細胞内局所においてタンパク質の機能を制御可能である。本研究では、フォトクロミック分子の一種であるアゾベンゼンを光応答性部位として利用する。アゾベンゼン構造を組み込んだタグタンパク質リガンドを開発することでタンパク質ラベル化法の光制御法を確立し、2種類のタグタンパク質を利用することでタンパク質二量化の光制御技術へと発展させる。本研究により開発する光応答性タンパク質二量化剤は人工的にタンパク質間相互作用を誘起することが可能であり、細胞内タンパク質の機能解明に有用な技術となることが期待される。 前年度までに、蛍光タンパク質とタグタンパク質との融合タンパク質を哺乳類細胞にて発現させるためのベクターの作製、ならびに融合タンパク質を安定的に発現する細胞株の樹立を達成している。 本年度は非環状の光応答性タグタンパク質リガンドならびにそれを基にタンパク質二量化剤を開発し、生細胞内でのタンパク質二量化の光制御に取り組んだ。具体的には、タグタンパク質の一種である大腸菌由来ジヒドロ葉酸還元酵素(eDHFR)の光応答性リガンドと共有結合性タグタンパク質(HaloTag)のリガンドとを連結した光応答性タンパク質二量化剤を開発した。HeLa細胞の細胞質にeDHFRを発現させるとともに、細胞膜内葉や小胞体外膜、ミトコンドリア外膜にHaloTagを発現させ、二量化剤を添加した後に紫色光を照射することで数秒以内にeDHFRがHaloTagの局在する区画へと移行する様子が蛍光顕微鏡により観察された。続く緑色光の照射によってサブ秒スケールで瞬時にタンパク質の二量化は解消された。この結果は既存の手法では困難な、光による可逆的なタンパク質二量化の制御と即時性を兼ね備えており、今後の発展が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに哺乳類細胞に対するタグタンパク質発現用ベクターの一部を構築している。また、環状リガンドの開発がやや遅れている状況ではあるが、非環状の光応答性タグタンパク質リガンドならびにタンパク質二量化剤の開発を達成している。さらに、生細胞内において光可逆的なタンパク質二量化の制御を実証している。したがって、全体としては当初の計画通り順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、(1)タンパク質二量化の光制御により細胞機能を制御可能か実証するためのアッセイ系の構築に取り組む。具体的には細胞膜や核内に移行して機能を発現するタンパク質とタグタンパク質の融合タンパク質を哺乳類細胞内に発現させるためのベクターを構築する。(2)非環状リガンドを用いた蛍光顕微鏡観察の観察条件・光照射条件の最適化にも引き続き取り組む。また、(3)環状リガンドの開発を早急に進め、環状リガンドの立体配座制御に基づくタンパク質への結合親和性の劇的変化の光誘起、を実証する。そのためにも、実験補佐員の雇用も念頭に置いて進める。
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Causes of Carryover |
目的化合物の合成の進捗がやや遅れているため、実験補佐員の雇用を検討している。そのための予算として次年度使用額が生じた。
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