2021 Fiscal Year Research-status Report
グアニン四重鎖RNA結合タンパク質による凝集体の形成機構と機能の解明
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20K05704
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大吉 崇文 静岡大学, 理学部, 准教授 (80406529)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | グアニン四重鎖 / 核酸結合タンパク質 / ケミカルラベリング / RGG領域 / 修飾アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、グアニン豊富なRNAが形成するグアニン四重鎖RNA(G4RNA)とG4結合タンパク質によって形成される凝集体の形成機構とその機能の解明を目的としている。特に1年目は、G4に結合するタンパク質の網羅的に解析するための手法の開発を行った(Chem. Comm. 56, 11641-11644, 2020)。既存のG4結合タンパク質検出法であるプルダウンアッセイ法などでは、結合力の弱いG4結合タンパク質を同定することが困難となっているため、G4結合タンパク質はほとんど明らかになっていない。そこで、G4結合小分子であるヘミンが有するペルオキシダーゼ活性を利用して、G4結合タンパク質を選択的にビオチン化修飾することで、網羅的に解析する方法を東北大学の佐藤伸一助教らと共に開発した。この新しい手法により、HeLa細胞内のG4結合タンパク質を網羅的に解析した結果、hnRNPファミリータンパク質などのこれまでに明らかになっているG4結合タンパク質だけでなく、新たにFibrillarinが見出された。 2年目は、1年目で見出したFibrillarinと、これまでに我々のグループで報告しているG4結合タンパク質であるTLS/FUSのG4結合性とメチル化修飾との関係を明らかにした。いずれのタンパク質も核酸結合領域であるアルギニンーグリシンーグリシン領域(RGG領域)を有しており、細胞内でアルギニンメチル転移酵素によりメチル化されることが知られている。また、これらのタンパク質のメチル化の修飾は凝集体の形成に関与していることが報告されているが、核酸結合性との関係については不明であった。これらの知見より、様ざな疾患に関与するG4結合タンパク質のアルギニンのメチル化修飾による凝集体の形成機構の解明に大きく貢献できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的な目的である、G4RNAとその結合タンパク質によって形成される凝集体の形成機構と機能の解明のために、1年目ではG4に結合するタンパク質を解析するための新たな手法の開発を東北大学の佐藤伸一助教らと共にした結果、これまでに我々の研究のよって見出されたG4結合タンパク質であるTLS/FUSやEWS以外に、Fibrillarinを新規G4結合タンパク質として見出した。さらに、TLS/FUSやEWSと同じファミリータンパク質であるTAF15もG4RNAとしてその核酸結合性を明らかにしており、G4RNAと共に液滴を形成することを報告した。 さらに2年目は、G4結合タンパク質であるFibrillarinとTLS/FUSの各G4結合性とそれぞれのタンパク質中のアルギニンが受けるメチル化修飾との関係を明らかにした。いずれのタンパク質もG4結合領域としてアルギニンーグリシンーグリシン領域(RGG領域)を有しており、細胞内でアルギニンメチル転移酵素によりメチル化されることが知られている。また、これらのタンパク質のメチル化の修飾は凝集体の形成制御に関与していることが報告されているが、核酸結合性との関係については不明であった。そこでメチル化の有無によるRGG領域解析した結果、TLS/FUSはメチル化によって、G4結合性が低下することがわかった。RGG領域は多くの核酸結合タンパク質の中に進化的に保存されているだけでなく、アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)などの疾患の原因のなる、タンパク質と核酸からなる複合体中にもRGG領域を含む核酸結合タンパク質が多く含まれていることが知られている。よって、本研究によって明らかになっている液滴を形成するG4とG4結合タンパク質の反応機構は、これら疾患の機構を明らかにする上で重要であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、G4RNAとG4RNA結合タンパク質によって形成される凝集体の形成機構と機能の解明のために、1年目は新規G4結合タンパク質を見出すための新たな手法を東北大学の佐藤伸一助教らと共に開発して、Fibrillarinを同定した。さらに、TAF15もG4RNAとしてその核酸結合性を明らかにしており、G4RNAと共に液滴を形成することを報告した。これらの結果を踏まえて2年目は、これまでに明らかにしたG4結合タンパク質であるTLS/FUSやFibrillarinのアルギニンのメチル化依存的なG4RNA結合機構を明らかにした。RGG領域を含むタンパク質が受けるメチル化修飾は、それらのタンパク質による凝集体形成の制御機構に関与していることが報告されていたが、G4結合性との関係については不明であった。TLS/FUSはメチル化によってそのG4結合性が低下したという知見は、RGG領域を含む核酸結合タンパク質と核酸からなる液滴の形成機構解明に大きく貢献できるだけでなく、アルツハイマー病やALS、FTDの機構解明や治療法の開発にも貢献できると期待できる。さらに3年目では、G4RNAとG4RNA結合タンパク質によって形成される液滴の機能解明を目指す。これまでに我々が見出したG4結合タンパク質であるTLS/FUSは、テロメアにおけるヒストン修飾を制御することを見出している。また、G4RNAもまたヒストン修飾を制御する1つであることがわかっている。すなわち、G4RNAとG4RNA結合タンパク質によって形成される液滴は、ヒストン修飾を制御する可能性がある。よって、この仮説の検証を行う。これらの結果は、上記の疾患に加えて、ガンなどの機構解明や治療法の開発にも貢献できると考えられる。
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Research Products
(17 results)