2021 Fiscal Year Research-status Report
外来蛋白質の細胞膜透過キャリアとしてのアルキル鎖を複数含むカチオン性ペプチド開発
Project/Area Number |
20K05705
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
水野 稔久 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90345950)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞膜透過キャリア / ペプチドジェミニ界面活性剤 / 上皮細胞増殖因子受容体 / p53蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
外来蛋白質を細胞質まで送達可能な技術開発が、精力的に取り組まれている。しかし「(1)分子量の大きな外来蛋白質、蛋白質会合体を、効率よく細胞質内に導入できる技術」、更にそれを「(2)特定の組織や細胞に選択的に導入できる技術」については、依然として検討が必要な段階にある。本研究では、複数のアルキル鎖を含むカチオン性ペプチドを精密に分子設計することによって、上記(1)、(2)の課題解決が可能な蛋白質キャリア分子が創出可能か検証を行っている。(1)については、前年度これまでに当研究室で分子量1.5 kDa程度の外来ペプチドに対して細胞膜透過キャリアとして有効とわかっている、DKDKC12-K3を分子量の大きなp53蛋白質(MW~46kDa)に対して可逆的な共有結合(細胞内の還元条件下で切れる結合)で複合化したものとすることで、導入されるp53蛋白質の細胞内での生理活性機能を高めることが可能と明らかとした。一方で(2)については、前年度から上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に対して結合活性を持つGE11ペプチドの利用による細胞種選択的なキャリア開発を検討していたが、細胞膜透過キャリアとして利用するPG-surfactant部分を最適化することで、EGFR高発現細胞と帝発現細胞で5倍程度の細胞種選択的な導入が可能となることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外来蛋白質を細胞質まで送達可能な技術開発が、精力的に取り組まれている。しかし「(1)分子量の大きな外来蛋白質、蛋白質会合体を、効率よく細胞質内に導入できる技術」、更にそれを「(2)特定の組織や細胞に選択的に導入できる技術」については、依然として検討が必要な段階にある。本研究では、複数のアルキル鎖を含むカチオン性ペプチドを精密に分子設計することによって、上記(1)、(2)の課題解決が可能な蛋白質キャリア分子が創出可能か検証を行っている。研究期間2年度目となる今年度も、引き続き(1)、(2)それぞれについて別個に検討を進めていった。(1)については、前年度これまでに当研究室で分子量1.5 kDa程度の外来ペプチドに対して細胞膜透過キャリアとして有効とわかっている、DKDKC12-K3を分子量の大きなp53蛋白質(MW~46kDa)に対して不可逆的な共有結合にて複合化することで、哺乳類細胞に対して効率よく送り込めることが明らかとなっていたが、さらに可逆的な共有結合(細胞内の還元条件下で切れる結合)で複合化させることで、導入されるp53蛋白質の細胞内での生理活性機能を高めることが可能と明らかとした。(2)については、前年度から上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に対して結合活性を持つGE11ペプチドの利用による細胞種選択的なキャリア開発を検討していたが、細胞膜透過キャリアとして利用するPG-surfactant部分を細胞膜透過性が中程度であるDKDKC12-K1へと最適化することで、EGFR高発現細胞と帝発現細胞で5倍程度の細胞種選択的な導入が可能となることを明らかとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的とする、「(1)分子量の大きな外来蛋白質、蛋白質会合体を、効率よく細胞質内に導入できる技術」、「(2)特定の組織や細胞に選択的に導入できる技術」に対して、(1)についてはこれまでに開発に成功している細胞膜透過キャリアDKDKC12-K3を可逆的な共有結合によって送達したいタンパク質に結合することで、それが効率よく可能となることを明らかとしている。しかしこれまでは、細胞死を誘導するp53のみの検討に留まっていた。そこで、細胞死を伴わずに送達された蛋白質の機能発揮を評価できる送達分子として、新たに遺伝子組み換え酵素Cre Recombinaseの導入についても検討し、DKDKC12-K3により細胞内に送達された分子が、核内での遺伝子組み換え機能も発揮可能か検討を進めたい。(2)については、今年度までの検討から細胞表面の受容体に対して親和性を持ったペプチドと組み合わせることで、キャリア自身の細胞種選択的な取り込み能の付与が可能と明らかとなっているため、これを生理活性ペプチドや蛋白質と複合化した場合にも、細胞種選択的な送達が可能となるか検討を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
幸いなことに比較的順調に研究計画に沿った実験の進行・成果取得ができてきているが、研究開始年度に、コロナウィルス に関連する緊急事態宣言で2ヶ月間研究室を一時的に止めなくてはならなかったことで、予算執行は全体的に遅れている。次年度は最終年度となるので、今年度までに開発に成功している、細胞種選択的な送達を可能とする送達キャリアの機能評価を可能とする実験系を増やして、当初の研究目標以上の達成を目指していきたい。
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