2020 Fiscal Year Research-status Report
経口投与により中枢神経系に作用させる細胞内標的化リポソーム
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20K05711
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
清水 佳隆 東海大学, 工学部, 准教授 (30398755)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リポソーム / セレブロシド / 消化管吸収 / パイエル板 / 中枢抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、食品分野で食餌性セレブロシドには様々な有用な生理的作用が確認されており、その吸収機構や作用機序についても検討されてはいるが、それらはセレブロシドが摂取後に消化された分解物が小腸上皮から吸収される既成概念の基で検討されている。また、セレブロシドは消化管での吸収率が悪いことが知られており、難水溶性であるためハンドリングが悪いため適用範囲が限られることから広範な利用に結び付いていない。本研究ではセレブロシドを水分散可能なリポソームとして扱うことで、吸収量の増大と利用範囲の拡大を図り、中枢系に作用しうる新たな機能性を持ったセレブロシドリポソーム製剤の開発を目指している。そのため、経口摂取したセレブロシドリポソームが粒子のままで取り込まれることの証明と、中枢神経系への作用機序を明らかにし、ストレス抑制効果をもつセレブロシドリポソームサプリメントとしてのデータを貯えることを目的としている。本年度は、内水層と脂質膜を二重蛍光標識したセレブロシドリポソームをBALB/cマウスに経口投与し、小腸パイエル板におけるリポソームの取込を解析すると共にパイエル板で取り込みに関わる細胞群を解析した。免疫組織染色およびFACS解析の結果、その取込に関わる細胞群と組織内動態の解析などを行なった。その結果、投与リポソームがインタクトな粒子状態で組織内に存在し、その取り込みに関わる細胞はマクロファージや樹状様細胞であることが示唆された。また、Ga-DOTAを内水層に封入したリポソームを調製後、マウスに経口投与して消化管組織中のGa量を検出定量することで、リポソームの粒子としての取り込み量の定量的な評価を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響を受けて実験実施者の入構が大幅に制限されたため当初の計画通りには実施できなかった。本年度は経口投与されたリポソームが粒子として取り込まれることを実証するため、内水層と脂質膜を異なる蛍光波長を持つ標識物で二重蛍光標識したセレブロシドリポソームを調製し、この標識リポソームを経口投与したマウスのパイエル板から組織切片を作成後、共焦点レーザー顕微鏡で解析した。その結果、リポソーム由来の蛍光の共局在が認められたことから、セレブロシドリポソームの一部は小腸パイエル板からインタクトな状態で取り込まれることが明らかとなった。また、免疫蛍光染色とFACS解析によりその取り込みはマクロファージや樹状細胞であることが示唆された。また、管腔側でリポソームを取り込んだ細胞の一部が時間経過と共に漿膜側に移動していることも確認された。リポソームの取込量に関する定量的評価を行うためGd-DOTA封入リポソームの経口投与後、摘出したパイエル板組織中に存在するGd量をICP発光分光分析による検出を試みたが、今回行った条件では十分な検出感度が得られなかったため、実験条件の最適化を図るため現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
セレブロシドリポソームの消化管における取り込み量の定量的評価に関しては、リポソームに封入するGd-DOTAの封入量の向上、投与量および組織試料の処理方法の最適化で測定感度の向上を図り達成することを目指す。また、PC-12細胞を分化誘導させたモデル神経細胞を用いて、細胞によるリポソーム取り込みとそれによって細胞膜の流動性に与える影響を解析する。さらに、マウスにセレブロシドリポソームを経口投与し、セレブロシドリポソームがin vivoで中枢抑制作用を発現しうるか解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響を受けて実験実施者の研究施設への入構が大幅に制限され当初の計画通りには実施できなかったためで、今後、追加の実験を行い、計画通りに使用できる見込みである。
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