2020 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性ガン細胞に対する光熱療法を指向した金ナノロッドーペプチド複合体の開発
Project/Area Number |
20K05713
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
富崎 欣也 龍谷大学, 先端理工学部, 教授 (90397026)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金ナノロッド / 光熱変換特性 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
ガン化学療法の長期化にともない抗ガン剤の効果が弱まる獲得耐性に対する課題への対応が急務となっている。これら多剤耐性(MDR)ガン細胞では、ABCトランスポーターファミリーが、ATP依存的に疎水性抗ガン剤を細胞外へ排出することが原因のひとつと考えられており、ATPを産生するミトコンドリアの機能制御が不可欠となっている。本研究課題では、MDRガン療法への応用展開を目指して、①ミトコンドリア局在シグナルを結合したペプチド集合体で表面修飾した金ナノロッド(GNR)をMDRガン細胞のミトコンドリアへ蓄積させ、②近赤外光照射下、GNRの光熱変換特性によるミトコンドリアの熱破壊ならびに抗ガン剤の放出促進を図る「MDR克服型ドラッグデリバリーシステムの構築」を目的とする。 2020年度は、本件プロジェクトの初年度であり、近赤外光照射装置およびサーモカメラといった実験装置の導入を行った。また、研究計画通り、コア-シェル型GNR-ペプチド複合体の合成を目指した。当初は、シグナルペプチドをβ-シート型水素結合ならびに疎水性相互作用によりGNR表面に担持することを試みたが、合成が煩雑となり、ペプチドの収率が極めて低かった。そこで、ミトコンドリア局在シグナル部分をALDH由来配列から、短鎖ペプチドであるL-シクロヘキシルアラニン(Cha)とD-アルギニンの繰り返し配列とし、これのC末端に、自由度を高めるためのオリゴエチレングリコールスペーサー、さらに金表面に自己組織化単分子膜を作成するオクタン酸とシステインを連結した。GNRの合成では、常法に従い、800 nm付近に吸収を示すアスペクト比4程度を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、ミトコンドリア局在シグナル部分をALDH由来配列から、短鎖ペプチドであるL-シクロヘキシルアラニン(Cha)とD-アルギニンの繰り返し配列へと変更したことにより、研究時間および資源を割くことになった。しかし、GNRの合成では、800 nm付近に吸収を示すアスペクト比4程度を得ることに成功しており、シグナルペプチドとGNRの複合化についても予備実験は終了している。現在、ペプチドとGNRの混合比を変えるなど、複合化条件を詳細に検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に獲得したコア-シェル型GNR-ペプチド複合体をIR、XPS、TEM、SEM、DLSなどにより詳細に解析し、正常細胞およびMDRガン細胞に添加し、GNRの細胞内局在を共焦点レーザー走査顕微鏡により評価する。また、コア-シェル型GNR-ペプチド複合体への疎水性相互作用による抗ガン剤の取り込みおよび近赤外光照射による温度変化や放出挙動を評価し、最終年度へ向けての基礎データを蓄積する。
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Causes of Carryover |
2020年度の首期は、新型コロナウイルス蔓延のため、出張が取りやめになったため、出張旅費計上分を物品購入に充てたため、若干の予算残が生じた。概ね、計画通りに予算執行できていると思う。
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