2021 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性ガン細胞に対する光熱療法を指向した金ナノロッドーペプチド複合体の開発
Project/Area Number |
20K05713
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
富崎 欣也 龍谷大学, 先端理工学部, 教授 (90397026)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 金ナノロッド / ペプチド / 近赤外光 / 光熱変換 / ガン化学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガン化学療法の長期化にともない抗ガン剤の効果が弱まる獲得耐性に対する課題への対応が急務となっている。これら多剤耐性(MDR)ガン細胞では、ABCトランスポーターファミリーが、ATP依存的に疎水性抗ガン剤を細胞外へ排出することが原因のひとつと考えられており、ATPを産生するミトコンドリアの機能制御が不可欠となっている。本研究課題では、MDRガン療法への応用展開を目指して、①ミトコンドリア局在シグナル(MTS)を結合したペプチド集合体で表面修飾した金ナノロッド(GNR)をMDRガン細胞のミトコンドリアへ蓄積させ、②近赤外光照射下、GNRの光熱変換特性によるミトコンドリアの熱破壊ならびに抗ガン剤の放出促進を図る「MDR克服型ドラッグデリバリーシステムの構築」を目的とする。
2021年度は、2020年度の成果もとに、MTS部分を表面に固定化したコア-シェル型GNR-ペプチド複合体(MTS-GNR)合成条件を確立し、赤外吸収、電子顕微鏡、動的光散乱法などにより、MTS-GNRの構造部性について詳細に解析した。また、MTS-GNRの近赤外光無放射下でのHeLa細胞への細胞毒性についても評価した。その結果、GNR表面修飾におけるMTS濃度依存的にGNR表面電荷は正へと大きくシフトしたことから、カチオン性のMTSがGNR表面に高密度に結合したことがわかった。また、MTS-GNRの表面電荷が正側にシフトするほど、細胞に対する毒性が高くなることもわかった。現在は、近赤外光無放射下における細胞毒性を最小限に抑制しつつ、細胞内への取り込みを可能とする表面電荷の調整と近赤外光照射による温度上昇パラメーターの評価を行なっている。最終年度では、近赤外光照射の有無による細胞毒性への影響を調査するとともに、多剤耐性ガン細胞へも対象範囲を広げることを目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の成果として、トコンドリア局在シグナルペプチド(MTS)の設計および合成、金ナノロッド合成法の確立、金ナノロッド表面のPEGおよびMTS修飾方法の確立、コア-シェル型GNR-ペプチド複合体(MTS-GNR)の構造物性評価、物性と細胞毒性の関連解明など、最終年度に向けて必要な基礎データを蓄積することができた。一方、近赤外光照射装置のセットアップは完了しているものの、当初予定していた近赤外光照射による温度上昇パラメーターの評価については未達である。以上より、概ね順調に進捗していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度(最終年度)は、近赤外光照射による温度上昇パラメーターの評価を早急に行い、近赤外光照射の有無による細胞毒性への影響を調査することによって、細胞の温度上昇と毒性の関係、温度上昇をトリガーとする抗がん剤の放出実験など、近赤外光と細胞を用いる実験を中心に資源と時間を投入する。
|
Causes of Carryover |
直接経費に対する未執行額は3%未満であり、計画通りに執行できたと考える。しかし、アミノ酸誘導体は概して高額であるため、年度末に予定していた実験内容の一部を持ち越すことにした。それによる未執行分の発生である。次年度において、試薬購入費に充当する。
|