2021 Fiscal Year Research-status Report
陸棲シアノバクテリアがもつ新規紫外線吸収物質の生理機能解析
Project/Area Number |
20K05724
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
坂本 敏夫 金沢大学, 生命理工学系, 准教授 (70324069)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環境耐性 / 極限環境生物 / 光合成 / 天然物 / 無水生活様式 |
Outline of Annual Research Achievements |
陸棲シアノバクテリアNostoc commune(イシクラゲ)は,休眠胞子などを形成することなく,非常に強い乾燥耐性を獲得して陸上環境に適応している。遺伝的多型があり4種類に大別されるが,これらを形態的に区別することは困難である。イシクラゲは紫外線に対する防御機構の一つとしてマイコスポリン様アミノ酸 (MAA)をもつ。MAAは310から340 nmの領域に吸収極大を示す紫外線吸収色素である。MAAの違いによって4種類の化学型に分けられる。イシクラゲが示す極限的な乾燥耐性を評価することを目的とし,研究室で長期間保存していたサンプルを用いて,光合成活性が保持されているか否か,検証した。室温で8年以上乾燥保存したサンプルでは光合成活性が回復しなかった。含まれている光合成色素およびビタミンEを分析したところ,β-カロテンとα-トコフェロールが特異的に失われていることがわかった。その他のカロテノイドおよびクロロフィルに顕著な変化は見られなかった。これまでの経験から2年程度光合成活性が維持されることが分かっていたが,長期に乾燥状態で室温保存した場合,徐々に損傷を受け,水和後直ちには光合成活性が回復しないことを実験的に示した。また,-20°Cで15年以上保存したサンプルでは光合成活性が保持されていた。低温で保存することによって光合成活性が維持されていたことから,損傷を受ける速度は保存条件に依存することが分かった。今後イシクラゲが示す極限的な乾燥耐性と光合成活性が水和によって回復する現象について,生化学的にメカニズムを解析していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イシクラゲが示す極限的な環境耐性について光合成活性を指標として調べたところ、乾燥状態で最長8年間保存したサンプルでも活性を維持していることが示された。この結果は,本生物の性質を学術的に検証した論文として初めての記載である。
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Strategy for Future Research Activity |
MAA合成に関与するmys遺伝子群を増幅する実験に着手した。候補遺伝子を大腸菌にクローニングした段階で,形質転換体がMAA合成中間体を産生しているかどうか, 高速液体クロマトグラフを用いて抽出物を分析する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で国際会議の開催が1年延期されたため,外国旅費の執行を2022年度に変更する。
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