2020 Fiscal Year Research-status Report
HSF-1 is indispensable for injured optic nerve regeneration.
Project/Area Number |
20K05725
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
杉谷 加代 金沢大学, 保健学系, 助教 (20162258)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Heat shock factor 1 / zebrafish / retina / optic nerve injury / FXIII-A / Sox2 / Oct3/4 / Klf4 |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類では中枢神経の優れた再生・治癒能力が認められる。そのため中枢神経の一つである視神経を切断し損傷させても、新しく中枢神経軸索の再伸長が見られ、視神経は完全に再生し視覚機能は回復する。 本研究では遺伝子データベースが有効に活用できるゼブラフィッシュを実験動物として採用し、視神経をクラッシュすることによる中枢神経損傷モデルを構築して実験を行った。ゼブラフィッシュの視神経を損傷した場合、数日以内に網膜神経節細胞より新しい神経突起が形成され、1か月以内にはこれらが再生した視神経として視蓋に入力する。その後、シナプス再編成の期間を経て約3~4か月後には視覚機能が回復する過程が観察される。 これらの視神経再生過程の中で、特に損傷直後から数日以内の急性期において、発現が上昇するHeat shock factor 1 (HSF-1)に着目し、その発現の変化について解析を行った。 その結果、視神経損傷後1時間でHSF-1のmRNA発現上昇が網膜において確認できた。この変化は、HSF-1だけでなく標的となるとして知られているHeat shock Proteins (HSPs)のHSP25、HSP60、HSP70、HSP90などにも連動した発現変化が観察された。さらに興味深いことに、cellular Factor XIII-A など他の再生関連分子がHSF-1発現の関与を受けて活性化することが示唆され、これまで知られているHSF-1の生理作用の他に、中枢神経の軸索再生や創傷治癒のスイッチを握る重要な分子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゼブラフィッシュ視神経損傷モデルを作製し、実験的に視神経を損傷させ、その直後から、0, 0.5, 1, 3, 6, 24時間後に、網膜、視神経および視蓋よりサンプル採取を行った。各サンプル組織より、total RNA およびタンパクの抽出を行って、視神経損傷後のサンプル系列を作製した。 これらのサンプルを用いて、HSF-1やHeat Shock Proteins (HSPs)の変動についてリアルタイムPCRによる解析を行った。その結果、網膜においては、HSF-1およびHSPs (HSP25, HSP60, HSP70, HSP90) 共に、視神経損傷後6時間後をピークとした、発現上昇が確認された。HSF-1のターゲットとしてはまだ報告のないcellular Factor XIII-A(cFXIII-A)については、遺伝子解析やChIP assayからHSF-1誘導の活性化機構が示唆されたため、同様に視神経損傷後のサンプルについて発現の解析を行った。その結果、損傷後6時間をピークとしたHSF-1と同じパターンの増減変化を示し、HSF-1の直接的な関与が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
HSF-1は、視神経損傷後の非常に早期の段階で発現が増加し、HSPsだけでなくこれまで報告にないcFXIII-Aなどの分子に対しても、発現・活性化の誘導に関与し、視神経再生に向けたカギを握っている分子であることが示唆された。そこで今後は、山中ファクター(Klf4, Sox2, Oct4) などの転写因子にどのように影響を与えるのか、また、抗アポトーシス因子にはどのように関与するのか、といった点に着目して解析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
学会参加及び出張費として確保していた予算については、コロナ状況下で中止となったりWeb開催に切り替えとなった学会があったため一部未使用となり、次年度の予算として繰延べを行った。 このため、これらの予算を新年度の物品費にプラスして約60万円の予算とし、HSF-1の遺伝子発現を抑制するためのRNAiの合成やモルフォリノ等の購入、さらにこれらの実験に必要なゼブラフィッシュや遺伝子実験関連試薬の購入に充てたいと考えている。
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