2020 Fiscal Year Research-status Report
シアリル糖鎖による免疫調節の分子基盤解明を目指したボトムアップアプローチ
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20K05727
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真鍋 良幸 大阪大学, 理学研究科, 助教 (00632093)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 免疫 / 合成生物学 / 複合化 / 糖鎖合成 / シグレック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,合成糖鎖をプローブとして用いたボトムアップアプローチにより,シアル酸の形成する生体分子社会の解明を目指す(Fig.1).まず,i) シアリル糖鎖をライブラリ合成し,ii) Siglecによるシアリル糖鎖認識を分子レベルで解析する.さらに,申請者が開発した合成糖鎖の細胞表面への提示システムを用い,iii) 生細胞系でSiglecとのcis,transの相互作用を厳密に評価する.加えて,vi) 糖鎖の不均一性(グリコフォーム)を再構成した系での解析も実施する.本研究を通して,シアリル糖鎖による免疫調節の分子基盤を解明し,糖鎖の多様性,不均一性の意義に迫るとともに,糖鎖機能解明の新たな方法論の提唱を目指す. i) シアリルN-グリカンのモジュール合成:シアル酸の結合パターン,分枝数(シアル酸の数),コアフコース,バイセクティンググルコサミンの有無などが異なるシアリルN-グリカンを網羅的に合成する(Fig.4).本年度はそのための多様性志向型合成ルートを検討した.加えて,重水素標識シアル酸含有N-グリカンを合成するとともに,4分枝シアリルN-グリカンの世界初の化学合成にも成功した. ii) シアリルN-グリカンとSiglecの分子レベルでの相互作用解析:大腸菌発現のSiglec-2とSiglec-10(糖鎖認識部位のみ)と合成シアリルN-グリカンの相互作用を,NNR,SPR,フローサイトメトリー(FACS)により解析する.本年度は,STD-NMRを用いて,Siglecによるシアリル糖鎖の認識の分子基盤を明らかにした. iii) シアリルN-グリカンとSiglecのcisおよびtransの相互作用の生細胞上での解析:申請者は,膜タンパク質に任意の合成糖鎖を導入する手法を開発した.この手法を用いて導入した糖鎖がレクチンに認識され,タンパク質の動態に影響を及ぼすことを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の肝は,N-グリカンの合成である.機能解明には,均一構造のN-グリカンを用いることが必須で,そのために化学合成を検討している.一方で,巨大な糖鎖の合成は大きな困難を伴い,時間,労力もかかる.これまでに,N-グリカンの大量合成を指向し,さまざまな検討を行ってきた.精密条件下でのスケールアップが可能なマイクロフロー反応を有効に利用し,中間体となるフラグメント(2-4糖構造)を10 g以上のスケールで合成した.また,グリコシル化反応でのエーテル溶媒による反応中間体の安定化や,アミド(‐NHAc)のイミド(‐NAc2)保護による反応性向上の効果を見出した.巨大な糖鎖同士のグリコシル化において保護基のパターンを最適化することで,収率,立体選択性が劇的に向上することも示した.これにより重要な機能を持つコアフコース含有12糖とバイセクティンググルコサミン含有8糖の合成を達成した.またこの過程で,汎用性の高い合成ルートを採用しているため,多くのN-グリカンにこの合成法は適用可能である.実際,ここで確立した手法を用いて本研究で用いる複数のシアリル糖鎖の合成を達成した. Siglecとシアリル糖鎖の細胞表層でのcisの相互作用解析においては,HaloTagを用いた蛍光イメージングを行う予定である.すでにHaloTag発現細胞を調製し,合成糖鎖の提示に成功している.加えてこの合成糖鎖がレクチンに認識されることも確認し,蛍光顕微鏡を用いたより詳細な動態評価に着手している. 加えて,Siglecとシアリル糖鎖の相互作用を原子レベルで解析するためにSTD-NMRを用いた実験を行う予定であるが,これに関してもすでに測定を実施し,その認識の分子基盤を明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
i) シアリルN-グリカンのモジュール合成:シアル酸の結合パターン,分枝数(シアル酸の数),コアフコース,バイセクティンググルコサミンの有無などが異なるシアリルN-グリカンを網羅的に合成する.sia-(2,3)gal,sia-(2,6)galを持つ非還元末端フラグメントと,コアフコースやバイセクティンググルコサミンを持つ還元末端フラグメントをさまざまな組み合わせで連結し,効率的にシアリルN-グリカンライブラリを得る(モジュール合成). ii) シアリルN-グリカンとSiglecの分子レベルでの相互作用解析:大腸菌発現のSiglec-2とSiglec-10(糖鎖認識部位のみ),および両方のSiglecを発現するB細胞(Raji細胞)と合成シアリルN-グリカンの相互作用を,NNR,SPR,フローサイトメトリー(FACS)により解析する.STD-NMRを用いてSiglecによる認識部位を調べる.また,SPRやFACSを用いてそれぞれの糖鎖とSiglecの親和性も評価する. iii) シアリルN-グリカンとSiglecのcisおよびtransの相互作用の生細胞上での解析:申請者は,膜タンパク質に任意の合成糖鎖を導入する手法を開発した.本手法を用い,SiglecとN-グリカンの“cis”,“trans”,および“cis+trans”の相互作用を再現し,これらの系で,NMRやFACS,蛍光タンパク質を用いたイメージングなどにより相互作用を解析する. iv) グリコフォーム再構成系での解析: 生体内では,複数の糖鎖が不均一に存在し,協同的もしくは競争的に働く.そこで,複数のTagを組み合わせて用い,それぞれに対応する糖鎖リガンドを作用させることで,複数の糖鎖を提示した細胞を設計・調製し,この細胞の免疫応答を調べる.
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] Unveiling Molecular Recognition of Sialoglycans by Human Siglec-102020
Author(s)
Forgione Rosa Ester、Di Carluccio Cristina、Guzman-Caldentey Juan、Gaglione Rosa、Battista Filomena、Chiodo Fabrizio、Manabe Yoshiyuki、Arciello Angela、Del Vecchio Pompea、Fukase Koichi、Molinaro Antonio、Martin-Santamaria Sonsoles、Crocker Paul R.、Marchetti Roberta、Silipo Alba
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Journal Title
iScience
Volume: 23
Pages: 101231~101231
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Immunological Evaluation of Conjugate/Co-Assembly of Peptide Antigen and Adjuvant as Self-adjuvanting Anti-breast Cancer Candidates2020
Author(s)
Keita Ito, Yoshiyuki Manabe, Taku Aiga, Tsung-Che Chang, Kazuya Kabayama, Shino Ohshima, Yoshie Kametani, Hiroto Furukawa, Hiroshi Inaba, Kazunori Matsuura, and Koichi Fukase
Organizer
第57回ペプチド討論会
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