2021 Fiscal Year Research-status Report
新規活性物質の創出に向けた天然物活性中心骨格を起点とするタンパク質の機能制御
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20K05730
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
土川 博史 大分大学, 医学部, 特任講師 (30460992)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アセチルコリン受容体 / スピロリド / ファーマコフォア / Diels-Alder反応 / 不斉合成 / アミノ酸側鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、複雑骨格天然物の「生物活性中心骨格」を抜き出し、それを中心とした系統 的な構造展開および生物活性評価を行うことで、生命現象の解明や医薬品開発に有用な新規生理活性物質を生み出すことを目的とする。本年度でも引き続き、生体に広く存在し、生命機能維持に恒常的に働く膜タンパク質であるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に焦点をあて、その強力な阻害剤であるスピロリドの活性中心骨格から精密な構造展開を実施することを計画した。 前年度までに申請者はスピロリドのファーマコフォアであるスピロイミン骨格の合成に成功し、さらにジメチル基の有無と5位の芳香環置換基に関する構造活性相関を実施した。本結果を踏まえ本年度ではまず、5位への種々のアミノ酸側鎖導入を意図し、より迅速な構造展開を可能にする骨格合成法を検討した。まず骨格形成を行うDiels-Alder反応において、シリルエノールエーテル構造を有するジエン基質を用いて検討することで、後の5位の誘導化のバリエーションを広げることを検討した。その結果、不斉銅触媒存在下室温で反応させることで、5位にシリルエノールエーテル構造を有するシクロヘキセン骨格構造をエナンチオ選択的に合成することに成功した。続いてエノールエーテル構造を足掛かりとし、5位での炭素-炭素結合形成反応を種々検討したが、オレフィン構造を残したまま本反応を実現することは困難であった。一方、エノールエーテル構造を収率よくケトンに変換することができたので、求核反応により5位に種々のアミノ酸側鎖を導入することが可能であり、そのルートを確立することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる目的は、複雑骨格天然物の「生物活性中心骨格」を基により簡便に構造展開可能な化合物を設計・合成し、その生物活性評価を行うことで、生命現象の解明や医薬品開発に有用な新規化合物を生み出すことである。今年度において、スピロリドのファーマコフォア構造に対して5位へのアミノ酸側鎖の導入をより効率的に行うことを意図し、前年度に明らかとなった骨格構築の問題点を解決することを目的とした。その結果、シリルエノールエーテルを有する新たな骨格構造を構築することに成功し、5位へのアミノ酸側鎖導入を容易にする中間体の合成ルートを確立した。さらに本研究を進める過程で、より効率的に構造展開・生物活性評価を行う「生物活性中心骨格」の設計にも着手し、その合成検討も同時に進めているため、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に5位へのアミノ酸側鎖導入をより効率的に行うことを意図し、新しいスピロリドの活性中心骨格構造の構築法の確立に成功した。一方で実際にそのような側鎖を導入した誘導体を種々合成する上で、合成反応の段階数や収率などの課題も生じたため、さらなる合成検討と並行して、新たな骨格の設計・合成検討も必要である。 そこで令和4年度は、まず引き続きスピロリド骨格を用い、より安定かつ合成が簡便と考えられるデスメチル6員環スピロイミン骨格を有する誘導体を数種類合成し、その活性を評価する。具体的には、nAChRのサブタイプ選択性への影響が示唆されている5位部分に種々のアミノ酸側鎖を模倣する置換基を導入した化合物を合成する。 さらに、このスピロリドを基にした活性中心骨格だけに限らず、大分大学で進めているペプチド擬態技術を駆使することで、新たな天然物様中心骨格の創出も検討する。前年度にnAChRとスピロリドの複合体構造から、相互作用に重要なアミノ酸の3次元構造を模倣した骨格を有する化合物を設計したので、実際にこれらの化合物の合成を検討し、その生物活性評価を行う。具体的な活性評価として、nAChRの競合阻害実験やチャネル活性試験に加え、大分大学において評価系が確立されている狂犬病ウイルス増殖抑制試験により、ウイルスの受容体であるnAChRへの結合による化合物の抗ウイルス活性の有無も確認する。
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Research Products
(1 results)