2020 Fiscal Year Research-status Report
制がん剤耐性獲得過程におけるEMT誘導の分子機序解析
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20K05732
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
田代 悦 昭和薬科大学, 薬学部, 准教授 (00365446)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | EMT / TGF-b / シスプラチン / 制がん剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで申請者らは、大腸がんLoVo細胞や肺がんA549細胞に白金制がん剤であるシスプラチンを長期間暴露すると、制がん剤耐性を獲得すると共にEMTを誘導することを見出した。さらなる研究の結果、シスプラチンはTGF-bシグナルの活性化を介してEMTを誘導していることを明らかにした。そこで本申請では、シスプラチンによるTGF-bシグナル活性化機構の解明を目標にした。まずシスプラチンがEMTを誘導する際に発現上昇する転写因子を検討した。その結果、シスプラチンを添加すると24時間後にEMT誘導転写因子として知られるSlugの発現が上昇した。ところでSlugの発現は、TGF-b受容体からSmadを介して発現制御されるパスウェイトSmad非依存的に制御されるパスウェイが存在することが知られている。そこでSmad依存的に転写が活性化するレポーター遺伝子CAGA-Lucを用いてシスプラチンがSmad依存的なパスウェイを活性化するかを検討した。その結果、シスプラチンはCAGA-Lucのレポーター遺伝子を活性しなかった。さらにSmad3-KO/A549細胞見シスプラチンを添加してもSlugの発現が上昇した。これらの結果より、シスプラチンはSmad非依存的なパスウェイを活性化することでSlugの発現を上昇させ、これがEMTを誘導していると考えた。 ところでSmad非依存的なTGF-bシグナルの活性化として、ERKやJNK、p38パスウェイが知られていることから、シスプラチンがこれらパスウェイを活性化する可能性について検討した。その結果、シスプラチンを処理すると、12時間以内にJNKとp38がリン酸化した。よってシスプラチンはp38/JNKパスウェイの活性化を介してSmad非依存的にTGF-bシグナルを活性化している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の1年目に当たる2020年4月より現職である昭和薬科大学に移ったことから、セットアップに時間を要した。さらに昨年より続くコロナ渦も相まって、進捗は計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究によって、シスプラチンはSmad非依存的にSlugの発現を制御していることが示唆され、その一つの可能性としてp38/JNKパスウェイの活性化が浮上した。今後は、シスプラチンによるp38/JNKパスウェイの活性化が本当にSmad非依存的なTGF-bシグナルの活性化(Slugの発現上昇)に関与し、さらにEMT誘導に必須なのかを検討する。具体的には、p38やJNK阻害剤、さらにはそれぞれに対するsiRNAを用いたノックダウンがシスプラチンによるTGF-bシグナルの活性化をキャンセルするのか、Slugの発現上昇を指標に検討する。またこのパスウェイの活性化が、白金制がん剤に特有の現象なのか、また大腸がんや肺がん細胞選択的なのか、様々な作用機序の制がん剤や遺伝背景の異なるがん細胞で検討する計画である。
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Causes of Carryover |
当該年度はコロナ渦の影響で研究が計画通りに進行できなかった。したがって、当初計画していた支出額よりも、実出費が大幅に低くなってしまった。次年度は、本年度に見出した現象を多方面(薬剤選択性、細胞選択性など)で検証する計画であり、細胞培養液や生化学的な検出試薬を必要とする。よって、次年度使用額(B-A)が「0」よりも大きくなる予定である。
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Research Products
(5 results)