2020 Fiscal Year Research-status Report
シャペロン様糖脂質MPIaseの膜上挙動観察と膜タンパク質膜挿入促進剤の開発
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20K05738
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
藤川 紘樹 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・構造生命科学研究部, 研究員 (50755874)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 糖脂質 / 膜タンパク質膜挿入 / シャペロン |
Outline of Annual Research Achievements |
MPIaseの細胞膜上での挙動観察を目的として、蛍光mini-MPIase-3の設計・合成に取り組んだ。これまでに立体障害の大きいHilyte-7、Cy-7などの蛍光基をmini-MPIase-3に導入したところ活性が消失したことから、比較的小さな蛍光基であるNBDの導入を行った。蛍光mini-MPIase-3(NBD)の膜タンパク質膜挿入活性を確認したところ、活性が消失していることが分かった。今後は、蛍光基の影響を緩和するため、6糖以上(天然体を含む)の糖鎖に導入を検討する。 詳細な構造活性相関研究のため、mini-MPIase-3のGlcNAc6位のAc基を改変した類縁体を合成した。GlcNAcの6-OAc基は基質タンパク質と疎水性の相互作用をしていると考えられたため、Ac基と同様に疎水性の高いと考えられる6-F体、6-OMe体、6-OBz体を合成し、6-OAc体と膜タンパク質膜挿入活性を比較した。その結果、予想に反してmini-MPIase-3(6-F)、mini-MPIase-3(6-OMe)、mini-MPIase-3(6-OBz)のいずれの類縁体も、mini-MPIase-3(6-OAc)よりも活性が低下することが分かった。GlcNAcの6位は、Ac基がベストであり、適度な疎水性と大きさが重要である事が分かった。 糖鎖伸長による膜タンパク質膜挿入活性の向上と膜シャペロン(YidC)との相乗効果、およびシャペロン様活性の発現を検証する目的で、9糖ピロリン脂質(mini-MPIase-9)、および9糖リン酸体(Nonasac-P)の合成を行った。現在、これらの化合物の活性試験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MPIaseの細胞膜上での挙動観察を目的とした蛍光mini-MPIase-3は、これまでに5種類の類縁体を合成したが、いずれも活性が消失していることが分かった。膜タンパク質膜挿入活性を有するMPIase類縁体の膜上挙動観察を行うため、引き続き蛍光MPIase類縁体の設計と合成を行う。今後は、蛍光基の影響を緩和するため、6糖以上(天然体を含む)の糖鎖に導入を検討している。 一方、MPIaseの構造活性相関研究は順調に進展しており、GlcNAc6位の構造要求性を明らかにするために、mini-MPIase-3(6-F)、mini-MPIase-3(6-OMe)、mini-MPIase-3(6-OBz)を合成し、活性を調べ、GlcNAcの6位は、Ac基がベストであり、適度な疎水性と大きさが重要である事を明らかにした。また、糖鎖伸長による膜タンパク質膜挿入活性の向上と膜シャペロン(YidC)との相乗効果、およびシャペロン様活性の発現を検証するために、9糖ピロリン脂質(mini-MPIase-9)と9糖リン酸体(Nonasac-P)の合成を行い達成することが出来た。また6糖リン酸体(Hexsac-P)の合成も行い、残り1段階となった。
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Strategy for Future Research Activity |
MPIaseの膜上挙動観察では、活性を保持した蛍光MPIase類縁体を得るため、6糖以上(天然体を含む)の糖鎖に導入を検討している。大きな糖鎖に導入することで、蛍光基の影響を緩和することが狙いである。また、脂質部分に蛍光基を導入することも検討している。脂質部分に導入することで、膜上挙動に影響が出る恐れがあるが、糖鎖部分は天然構造が保たれるため、基質タンパク質との相互作用には影響しないのではないかと考えている。 MPIaseの構造活性相関研究では、9糖ピロリン脂質(mini-MPIase-9)の膜タンパク質膜挿入活性と膜シャペロン(YidC)との相乗効果を確認する。また9糖リン酸体(Nonasac-P)や6糖リン酸体(Hexsac-P)のシャペロン様(タンパク質凝集抑制)活性を検証する。
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