2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K05741
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安野 理恵 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30392674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三谷 恭雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ付 (10358103)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 発光生物 / ルシフェラーゼ / ゴカイ |
Outline of Annual Research Achievements |
発光ゴカイは鮮やかな青緑色(510nm)の発光液を海中に分泌する発光生物である。1950年代には、ルシフェリン・ルシフェラーゼ分子による発光機構を有することが示されたが、確認されている生息域は世界でも数カ所のみで、それ以降詳細な解析は進められていなかった。本研究では、発光ゴカイの発光分子機構を解明することを目的として、in vitroにおける発光反応の生化学的解析、ルシフェラーゼの結晶構造解析を進める。これまでにゴカイルシフェラーゼの単離、同定に成功し、生体から抽出したルシフェリン溶液と動物培養細胞で発現させたルシフェラーゼタンパク質を用いてin vitro発光系を構築している。ルシフェリン分子については分子構造の報告はあるものの、人工合成系は未だ確立されていないため、生体試料からの粗抽出物を解析に使用する。構築した発光系において、発光反応のpH依存性や温度依存性、塩濃度依存性など、ゴカイ発光反応の生化学的特性の解析を進めている。一方で、得られる発光データに不安定さがみられることから、実験系の精査とルシフェラーゼタンパク質の粗精製を検討している。また、ゴカイルシフェラーゼタンパク質の特異抗体の作成および結晶構造解析に供試するために、ルシフェラーゼタンパク質の大量調整の検討を引き続き進めた。これまで、様々な発現プロトコールの改良や可溶化タグを付加し、組換えタンパク質の細胞外分泌を試みたが効果的な分泌率向上には至っておらず、細胞内または膜タンパク質に蓄積または凝集していると思われる組換えタンパク質の可溶化の検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ルシフェラーゼの生化学的特性の解析、結晶構造解析のため、動物細胞発現系による酵素タンパク質の大量発現系の構築を試みた。しかしながら、複数のシグナルペプチドを試行したが、分泌効率の上昇には至らなかった。また細胞内で大量に蓄積し、その多くが凝集体もしくは多量体を形成していることが想定されたために、変性剤と界面活性剤による可溶化を試みたが、酵素活性に大きな変化は見られなかった。細胞粗抽出液でも活性の計測は可能だが、酵素タンパク質の濃度を計測できないため正確な解析結果を得るために精製タンパク質の獲得を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
ルシフェラーゼを発現させた動物細胞の粗抽出液を用いた生化学的試験の結果は、データが不安定であることと、発光の経時変化に不可解な点があることから、His-tagで精製したルシフェラーゼでの再解析を予定している。また、結晶化に供試するタンパク質の調整が困難なことから、立体構造予測モデルを使った予想構造から活性中心付近のアミノ酸変異体を作成・解析し、発光ゴカイの発光分子機構の解明へ繋げる。また、動物細胞発現系でのタンパク質生成だけでなく、植物細胞など他の発現系の生成を検討する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画で想定した結果が得られず試験法の変更が生じたことに加え、本課題の遂に必須となる生体試料サンプルの野外収集がコロナ下の状況で実施できなかったため、十分量の試料を確保できなかったことから、計画通りの進捗および予算使用とならなかった。 本年度、野外採集の旅費及び酵素活性確認試験等の消耗品費として使用予定である。
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