2021 Fiscal Year Research-status Report
高効率な復帰変異株獲得に基づく膜蛋白質とリガンドの相互作用解明法の有用性の検証
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20K05750
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
篠原 康雄 徳島大学, 先端酵素学研究所, 教授 (60226157)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ADP/ATP輸送体 / ボンクレキン酸 / 復帰変異株 / タンパク質リガンド相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はミトコンドリアのADP/ATP輸送体に注目し、その特異的阻害剤であるボンクレキン酸との相互作用様式の理解を目指した研究を進めてきた。これまでの研究で、ボンクレキン酸存在下でも輸送活性を示す「機能復帰変異株」を獲得することで、ボンクレキン酸と相互作用しているアミノ酸残基を特定できる可能性を見出していた。一方で、英国MRCの研究者らがボンクレキン酸の結合したADP/ATP輸送体の結晶化に成功し、その構造データを発表した。研究代表者らがこれまでに復帰変異株獲得でボンクレキン酸と相互作用しているとして同定してきたアミノ酸残基が実際にボンクレキン酸と相互作用していることが証明され、本研究の妥当性が支持された。 本研究では、ADPATP輸送体にボンクレキン酸耐性をもたらすアミノ酸変異を掛け合わせることで、ボンクレキン酸に強い抵抗性を示すADP/ATP輸送体を創製できる可能性を考え、実験に取り組んだ。その結果、①アミノ酸置換を掛け合わせると、ADPATP輸送体の機能障害が起こることがあることが分かった。ADP/ATP輸送体にボンクレキン酸耐性をもたらすアミノ酸変異を掛け合わせると、どうして機能障害が起こるのかを検討したところ、新たに導入されたアミノ酸残基同士で立体障害が起きているケースを2件確認することができた。また、②ボンクレキン酸に抵抗性をもたらすアミノ酸置換を掛け合わせても、ADPATP輸送体の機能障害が行らないケースもあることが判明し、ボンクレキン酸に高い抵抗性を示す、ADP/ATP輸送体の創製にこの戦略が有用であることを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
もともとの研究計画では、九大の新藤教授のグループで合成されたボンクレキン酸類縁体を用いて、これらの類縁体に対して抵抗性を示す復帰変異株獲得を計画していた。この方法を採用することで、ボンクレキン酸と相互作用しているアミノ酸残基がボンクレキン酸とどのように相互作用しているかを明らかにすることができる可能性を考えたためである。 しかし、研究を推進しているうちに、ボンクレキン酸そのものに対する復帰変異株獲得に関する実験そのものについてより深めた実験を遂行することの重要性を感じたため、こちらの研究課題を優先して遂行した。その結果として「ボンクレキン酸抵抗性をもたらすアミノ酸残基を掛け合わせる」という戦略を新たな戦略を提案することに成功し、それによってボンクレキン酸により高い抵抗性を示すADP/ATP輸送体を創製できる可能性を見出すことができた。アミノ酸置換の掛け合わせという戦略は、必ずしもいつもうまくいくわけではないことが判明した一方で、実際に高いボンクレキン酸抵抗性を示すADP/ATP輸送体を創製できたことは特筆に値する研究の進捗であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように「ボンクレキン酸との親和性を低下させるアミノ酸変異の掛け合わせ」という新たな研究遂行戦略が生じたことで、当初の計画とは少し方向性が異なる研究課題を進めることになった。これらの研究の推進はより一層の発展をもたらす可能性が高いので、引き続き継続して遂行する予定である。 一方で、今後は当初の実験計画通り、①ボンクレキン酸と構造がわずかに異なるアナログを用いた実験を行うことで、特定のアミノ酸残基がボンクレキン酸のどこと相互作用しているのかを明らかにする、②つい最近見いだされたミトコンドリアのリン酸輸送体の特異的阻害剤ML316(Nature Chemical Biology 14(2018)135)についても、リン酸輸送体との相互作用の様式を明らかにすることを目的とした研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
実験には多くの消耗品を必要とするが、本年度はストックしてあった消耗品を使用することで、実験をある程度遂行することができたため、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した研究費と合わせて消耗品費に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)