2021 Fiscal Year Research-status Report
根圏に放出されるカフェインが植物のアルミニウム耐性に及ぼすインパクト
Project/Area Number |
20K05764
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
森田 明雄 静岡大学, その他部局等, 理事 (20324337)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一家 崇志 静岡大学, 農学部, 准教授 (90580647)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | チャ / アルミニウム / カフェイン |
Outline of Annual Research Achievements |
チャはアルミニウム (Al) に応答してアルカロイドの一種であるカフェインを根から放出するが,Al処理に応答した放出パターンを示すことから,Al耐性機構との関連性が示唆されるが,その意味や役割については未解明である.昨年,チャの生育に及ぼすカフェイン処理の影響について,茶の主要品種「やぶきた」一年生挿し木苗を用いた水耕栽培により調査し,低濃度のカフェイン処理によりチャ根の生育促進と,カフェイン処理濃度の増加に伴う根の褐変化および生育量減少などの過剰害を確認した.本年度は,チャ根からのカフェイン放出のAl特異性並びにAl応答性を検証するために,チャ「やぶきた」無菌実生苗を様々な金属 (Al,Cu,Cd,La:0-4.0 mM) を含む培養液で24時間処理し,カフェイン放出量を調査した.また,Al処理濃度 (0-10.0 mM) を変化させ,上記と同様にAl投与量試験を行った.その結果,根からのカフェイン放出はAl特異的であり,他金属では誘導されなかった.また,Al処理濃度の増加に伴いカフェイン放出が増加する傾向が観察された.さらに,根におけるカフェイン含量もAl処理に応答した増加傾向が観察された.一方,各金属処理によるカフェイン生合成遺伝子 (Tea caffeine synthase:TCS) 発現量を調査したが,短時間の処理による影響はみられなかった.以上の結果より,チャはAl特異的に応答して植物体中のカフェインを根圏へと放出することが推測された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無菌実生苗によるカフェインの応答性については,当初の予想通りの結果を得ることができた.コロナ禍での実験を余儀なくされているため,無菌植物体の調整がやや困難であったが,実験室内での試験が並行してできるようにうまくスケジューリングし進めている.年次間差による影響を調査するため,複数年の試験結果が必要であるが,今年度は試験を見送った.遺伝子組換え体の作出については試行錯誤を続けており,組換えベクターの作製に取り掛かっている.よって,全体的には概ね順調に進捗していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
以下の項目について焦点を当て,研究を推進していく. ①水耕法または無菌苗によるカフェイン添加試験 水耕系および無菌植物体を用いた試験の再現性を確認することで,根の生育量とカフェインや有機酸等の根圏への放出物質との関係性について考察する.また,茶の培養細胞を用いた実験系を立ち上げることで,より簡便な研究の遂行を目指す. ②シグナル伝達経路の解明 ①の実験と平行して,引き続きトランスクリプトーム解析およびカフェイン合成変異体の作出といった分子生物学的試験を推進する.また,特に根端におけるカロースと根伸長との関連性を調査する.カロースについては組織的な蓄積部位,合成の場やそのタイミングについて組織染色法やRNA-seqを用いたトランスクリプトーム解析を実施し,カフェインの放出や生合成,根伸長等に関連する相関ネットワークを明らかにする.
|