2022 Fiscal Year Annual Research Report
生育表現型の回復した光合成因子欠損株のゲノム変異とその光合成機構の解析
Project/Area Number |
20K05769
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
和田 慎也 神戸大学, 農学研究科, 助教 (80637942)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光合成 / 電子伝達 / 光酸化ストレス / 光阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生育表現型の異なる2つのPGR5欠損シロイヌナズナ株(pgr5-1, hope1)の生育差の原因を遺伝学的に解明し、植物の光ストレス耐性に関わる知見を得ること、またその情報を光合成能力の向上へと応用することを目指したものである。 前年度までに、2系統のpgr5欠損株の生育表現型の違いの原因は、pgr5-1株に存在した第2変異ptp1に起因することが明らかになった。また、ptp1変異はPGR5欠損下において光ストレスの感受性を助長し、特に光化学系I(PSI)の酸化障害をしやすくすることで、生育抑制やCO2固定速度を低下することが示唆された。 PSIの酸化障害は光合成装置の致命傷となるため、植物の光ストレス耐性能力理解の鍵となる知見となる。最終年度は、pgr5欠損下においてptp1変異がPSI酸化障害を助長する仕組みを解析した。ptp1変異は、葉緑体リボソームの生合成に関与するCGL20A遺伝子上に座上していた。そこで、葉緑体ゲノムに存在する遺伝子及びタンパク質の発現を解析した。その結果、ptp1変異はNDH複合体タンパク質の発現を低下させることが明らかになった。NDH複合体はPGR5との2重欠損により植物の生育及びPSIの酸化障害が顕著に生じることが知られており、ptp1変異はNDHタンパク質の発現低下を介して、PSI酸化障害を助長していることが考えられた。本研究の結果は、これまでPGR5単独の欠損株と考えられていたpgr5-1株の表現型が、第2変異ptp1により助長されたものであることを示し、これまでのPGR5に関する光合成モデルの再考を促すものとなった。
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