2020 Fiscal Year Research-status Report
低投入を目指したイネ体内におけるミネラル再分配機構の分子生物学的解析
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20K05773
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
三谷 奈見季 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (40581020)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イネ / 再分配 / リン |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である本年度は、通常栽培条件とミネラル欠乏条件で栽培したイネ(品種:日本晴)の栄養成長期のソース器官(下位葉)の維管束組織で高発現している輸送体を二つ選抜し、それぞれ機能解析を行った。 一つ目の輸送体は、SULTRファミリーに属する輸送体である。定量PCRの結果mRNAが生育期間を通して主に地上部で発現していることを見出した。またタマネギの表皮細胞とイネのプロトプラストを用いた一過性発現による細胞内局在の解析を行ったところ、両発現系において目的タンパクとGFPとの融合タンパク質は細胞膜に局在していることが明らかになった。アフリカツメガエル卵母細胞を用い輸送基質を調べたが、(配列情報に基づいた)基質の第一候補であったリンの輸送活性は見られなかった。輸送基質の決定に関しては次年度以降、酵母やプロテオリポソームなど、他の系で検証する予定である。またこの輸送体タンパク質の抗体を作製し、免疫組織染色による組織局在の解析をおこなったが、特異的なシグナルは検出できなかった。そこで、promoter-GUSの形質転換イネを取り寄せて抗GUS抗体を用いた免疫染色を行ったところ、この輸送体は維管束鞘細胞より内側の細胞に局在することが分かった。さらにT-DNA挿入変異体を用いた機能の解析を行い、幼植物期における変異体は野生型に比べ下位葉に多くのリンが蓄積され、逆に最上位の葉で少なくなる結果が得られた。 二つ目の輸送体はケイ酸輸送体Lsi2と比較的相同性の高い輸送体である。定量PCRの結果、この輸送体は生育期間を通して地上部とくに葉鞘で高発現していた。イネプロトプラストを用いた系では細胞内局在がはっきりしなかったことから、今後系を変えて調べる。アフリカツメガエル卵母細胞を用いた輸送異質の同定も試みたが、基質の候補であったケイ酸の輸送活性は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とした三つの機能をそれぞれ担う輸送体のうち、本年度単離した輸送体は 「篩管への再ローディングに関わる輸送体」 「維管束内輸送に関わる輸送体」 のどちらかに関わることが初年度の研究成果から推測できることから、概ね計画通りに進行できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、最初に目的として記した3つの機能をそれぞれ担う輸送体のうち「液胞からの取り込み」を担うものを、すでに実施している下位葉の葉肉組織においてミネラル欠乏条件下でその発現が誘導される必須ミネラルの輸送体を選定することによって液胞に貯蔵されているミネラルの細胞質への取り込みを担う輸送体の単離を目指す。さらにこれもすでに実施している個別のミネラルの欠乏条件下における葉全体のトランスクリプトーム解析結果とも照らし合わせることで、候補の選抜をより確実なものとする。このような各条件での候補遺伝子の選定を行い、初年度に倣って機能解析を随時進めていく。 また、初年度単離し機能解析を進めている輸送体二つについては、研究実績の欄に記載のように、組織局在と輸送基質の同定がまだ十分ではないことから戦略を変えて本年度進める必要がある。また、二つ目の輸送体については、ゲノム編集技術を用いた変異体を作成しており、次年度はその変異体を用いた機能解析を進める。
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