2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K05780
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
垰 和之 東京大学, アイソトープ総合センター, 助教 (00211996)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リポ蛋白質 / 細胞表層 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌の細胞表層には、N末端が脂質で修飾され、その脂質部分で細胞膜と結合しているリポ蛋白質が存在している。従来、グラム陰性細菌のリポ蛋白質の多くは、外膜内葉に脂質部分をアンカーし、蛋白質部分はペリプラズム空間に面するかたちで存在すると考えられてきた。しかしながら、最近の研究からは、外膜リポ蛋白質のなかには細胞表面にその一部分を露出するものがあることが明らかになってきた。本研究では大腸菌外膜リポ蛋白質群が内膜から遊離して外膜へ輸送され、細胞表面に露出する仕組みについて明らかにすることを目的としている。 今年度は、外膜に存在するベータバレル型蛋白質であるOmp蛋白質群と相互作用することにより、細胞表面にその一部分を露出することが明らかになっているRcsF蛋白質が、どのような状態でその一部分を細胞外に露出しているのかについて部位特異的光架橋法を用いて解析した。変異型tRNAとアミノアシルtRNA合成酵素を用いて、RcsFの様々な部位に光架橋性アミノ酸であるベンゾイルフェニルアラニン(pBpa)が挿入された蛋白質を発現させ、長波長紫外線照射することによりin vivoで光架橋形成を行った。その結果、N末端側の可変ループ領域の一部とC末端側の球状領域のうち可変ループに近い領域にpBpaを導入したものでOmpA蛋白質と光架橋を形成すること見出した。同様の手法でpBpaを様々な部位に導入したOmpAを用いて光架橋実験を行い、RcsFと相互作用するOmpA蛋側の領域同定を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大による研究活動制限のため研究の進捗は全体的にやや遅れている。約100種類存在する大腸菌リポ蛋白質の中から、部分的に細胞外に露出している領域を持つものを探し出すことを計画していたが実施できていない。これは次年度に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引続き当初予定していた実験を実施していく。 初年度に計画していた細胞外に露出する新規リポ蛋白質の同定実験は今年度実施する。 また、本研究と並行して実施している共同研究で、界面活性剤で可溶化したLol因子を用いて、リポソームに再構成することなく可溶化した状態でリポ蛋白質輸送の素過程を観察できる新たな実験系を確立しつつある。細胞表面に部分的に露出する蛋白質と外膜内葉に留まるリポ蛋白質でその輸送のされ方に違いが見られるかどうかをこの実験系でも検証していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大による研究活動制限等により、全体的に研究の進行が遅れたため次年度使用額が生じた。 今年度は研究の進行を加速し、前年度に実施できなかった内容も順次実施していく予定であり、繰越分はそのための経費に充てる。
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