2020 Fiscal Year Research-status Report
核はなぜ分解されないのか?-糸状菌に学ぶヌクレオファジーの分子機構-
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20K05783
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有岡 学 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20242159)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オートファジー / 核 / 液胞 / ヒストンH2B-EGFP / Atg8-interacting motif |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーによるオルガネラの分解においては、オルガネラ上に存在する受容体タンパク質がオートファゴソーム上のAtg8と結合し、それがオートファゴソームによるオルガネラの包み込みと液胞での分解を誘導することが知られている。ヌクレオファジーにおいて麹菌Atg8オルソログであるAoAtg8による核の認識に関わる受容体を同定するため、AoAtg8結合タンパク質を探索した。候補となる6個を選別し、その局在解析を行ったところ、いずれも核に局在することがわかった。各遺伝子の破壊株を用いてヒストンH2B-EGFPの分解を検討したところ、うち1つの破壊株で炭素源飢餓時におけるヒストンH2B-EGFPの分解が抑制された。また、この候補タンパク質は酵母two-hybrid実験においてもAoAtg8と結合すること、Atg8-interacting motif (AIM) を3つ持つこと、そのうちAIM3の変異体ではAoAtg8結合能が失われることが示された。さらにAIM3変異体発現株ではヒストンH2B-EGFPの炭素源飢餓時における分解が抑制された。以上からこの候補タンパク質がヌクレオファジーにおける核受容体であることが示唆され、NprA (Nucleophagy receptor A) と命名した。一方、麹菌Atg15オルソログであるAoatg15破壊株の蛍光顕微鏡観察から、炭素源飢餓時に核と推定される球状の構造体が液胞内に蓄積することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヌクレオファジーにおいて核の認識に関わる受容体はこれまで見つかっていない。NprAはその有力な候補であり、新奇性の高い重要な発見と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) NprAは非飢餓時には核質内に局在するが、飢餓時にはAoAtg8と結合するため核膜表面に移動すると考えられる。この点は未確認であるので、NprA-EGFPのTime-lapse観察によりこれを実証する。また、NprAは膜ドメインを持たないことから、NprAを核膜上にアンカーする膜タンパク質の存在が示唆される。そこでNprAと結合し、膜ドメインを持つタンパク質の探索を行い、NprAを核膜上に局在する仕組みの解明を目指す。 (2) ヌクレオファジーではヒストン以外の核タンパク質や核膜タンパク質、クロマチンDNAの分解も起こっているはずである。そこでヒストン以外の核タンパク質の分解や、出芽酵母において核膜に局在することが知られているタンパク質の麹菌オルソログの分解を調べる。また、[3H]チミジンを取り込ませた細胞を用いて核DNAの分解を検討する。 (3) Aoatg15破壊株において核がオートファゴソーム膜によって取り囲まれ、液胞に輸送される様子をTime-lapse撮影により観察する。また、オートファゴソーム膜と液胞膜の融合に関わる出芽酵母YPT7の麹菌オルソログAoypt7の破壊株を用いて核がオートファゴソーム膜によって取り囲まれた、液胞膜との融合直前の状態が観察できるかを検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は前年度までに候補タンパク質の絞り込みができていたため、候補となるタンパク質に集中して解析を進めることができた。そのため大掛かりなスクリーニングを行う必要がなく、効率よく実験を進めることができた。来年度以降はNprA結合タンパク質のスクリーニングなど再び探索研究を展開する予定のため予算的な余裕が必要である。
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