2021 Fiscal Year Research-status Report
ギ酸代謝関連遺伝子の探索とそれらを利用した高速ギ酸資化菌の創出
Project/Area Number |
20K05784
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊原 正喜 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (50391868)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カーボンリサイクル / ギ酸資化菌 / 微生物培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度では、2020年度にセットアップしたギ酸資化菌スクリーニング系を用いて、ギ酸資化菌の収集を実施した。土壌サンプルはキャンパスを含めた長野県や近隣県から十数か所、淡水サンプルはキャンパス内水田を含めた県内を5か所、海水サンプルは新潟県と愛知県から3か所、その他イラクサなどギ酸を含む植物サンプルやアリの巣サンプルなどを採取し、ギ酸含有最小培地に植菌した。 集積培養は、ギ酸消費に伴うpH変化をモニタリングしながらギ酸自動滴下する半回分培養(ギ酸fed-batch)で行った。その結果、植物サンプルを除くサンプルから、ギ酸資化菌の増殖が確認できた。それらをメタノール含有寒天培地に播種し、多数のクローンを単離した。ここでの選択培地として、ギ酸含有培地を選択しなかった理由は、ギ酸平板培地ではpH調整が困難なためである。また、メタノール含有培地を選択した理由は、培養中のpH変化が小さいことと、ギ酸資化菌の多くがメタノール資化能を有するためである。ただし、メタノール資化を持たないギ酸資化菌は脱落することになる。なお、2020年度に、ギ酸含有培地に浮かべた多孔性の膜上での平板培養を確立したが、実際にはコロニー形成率が低く、今回の使用を断念している。 得られたギ酸資化菌を小スケール多検体培養するために、ギ酸fed-batch培地に透析チューブ(数ミリ容量)を入れ、その中に植菌した。良好な増殖が確認された株について、セリン回路に特徴的なhydroxylpyruvate reductase活性を指標にセリン回路保有ギ酸資化菌を同定した。順次、300ミリスケールのギ酸fed-batch培養を実施しているが、すでに代表的なセリン回路利用株であるMethylorubrum extorquensの6倍の濁度にまで増殖できる株を得ることに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の単離株は、代表的なセリン回路利用株であるMethylorubrum extorquensよりも、数倍高い濁度に達することができる。応用微生物分野において、到達濁度が生産性に最も大きく寄与する因子であり、実用化において重視されるため、優良な株が単離できたと考えることができる。しかし、文献で報告されているMethylorubrum extorquensの最も高いレベルの増殖速度や到達濁度と比較すると、我々のMethylorubrum extorquensのそれぞれの値は数分の1と低く、今回の単離株は1.5~2倍高い程度であった。我々の培養条件を再検討する必要があると考えれるが、逆に、再検討および最適化することで、今回の単離株のデータがさらに向上する可能性を有すると考えることもできる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた株の培養条件最適化を検討するとともに、高い濁度まで増殖可能である要因について調査する。到達濁度は、平均倍加時間、細胞死頻度、休止化頻度、溶菌速度、溶菌細胞流出物質資化速度などのパラメーターで記述できると考えられる。また、それぞれのパラメーターは、ギ酸や溶菌細胞流出物質の濃度に依存すると考えられる。Methylorubrum extorquensや今回単離した株の中で、それぞれのパラメーターのギ酸や溶菌細胞流出物質濃度依存性を見積もり、到達濁度やPHB生産に影響を与える最も大きなパラメーターを特定する。 それぞれのパラメーターの見積もり方法は、生死判定試薬を用いて、生細胞と死細胞、休止細胞、溶菌細胞数を蛍光顕微鏡観察によってカウントし、モデルに当てはめることで見積もる予定である。
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Causes of Carryover |
軽微な額であり、予定通り執行できたと考える。
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