2020 Fiscal Year Research-status Report
セルロースの酵素分解を促進する新規タンパク質の機能解析
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20K05785
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
野崎 功一 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10313834)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | セルロース分解 / セルラーゼ / Trichoderma reesei / バイオマス利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 各種セルロース分解酵素に対する反応促進効果を評価 [令和2年度] Cip1が反応促進する酵素成分を特定するために,T. reesei由来Cip1の組換えタンパク質を使用して,本菌が生産する各セルロース分解酵素に対する反応促進効果を調査した。実験に使用したセルロース分解酵素は遺伝子組換え技術によって作製し,精製したCel6A, Cel7A, Cel7B, Cel5A, LPMO9AおよびLPMO9Bである。これらの中でLPMO9AおよびLPMO9Bに対しては,Cip1の反応促進効果が確認された。Cip1を加えることで可溶性糖量は約1.6倍に増加し,LPMOの通常の反応生成物であるセロオリゴ糖およびC-1またはC-4位が酸化されたセロオリゴ糖の全ての生成量が同様に増加していることを明らかにした。これらの結果から,Cip1はLPMOの反応を促進することでセルロースの酵素的分解を促進していることが推定された。
2. Cip1最適作用条件の調査 [令和2-3年度] Cip1が作用する最適条件を決定し,Cip1の作用を定量化するために,Cip1の最適反応条件を見つけるために,基質としてろ紙,リン酸膨潤セルロース(PASC)を使用し,各種セルロース分解酵素とともに反応を行った。Cip1の反応促進効果は,単独のセルロース分解酵素成分よりも複数の酵素成分が共存する時に顕著に生じた。また,反応の促進にはLPMOが必須であることも明らかとなった。基質としては,実験に使用したセルロース分解酵素が作用しやすいものが最適であり,例えばろ紙であればLPMOに各種セルラーゼが共存する時,PASCであればLPMO単独でも反応促進効果が確認できた。本項目については,2021年度も引き続き調査を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定の研究内容は全て実施済みであり,順調な研究成果が得られている。これらの成果をもとにして,次年度以降の研究を予定通り遂行できると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. Cip1最適作用条件の調査 [令和2-3年度] 引き続き,Cip1添加量,反応pHや温度,反応促進を効果的に引き起こすセルロースの種類を調査することで,Cip1の作用を最適化し,定量化する方法を確立する。 2. Cip1の活性中心アミノ酸残基の決定,CBM1の役割を検証 [令和3-4年度] Cip1の作用メカニズムをアミノ酸変異導入によって調査する。多糖リアーゼとの構造比較から,Cip1には活性発現に関与すると推定されるアミノ酸残基が保存されていることがわかっている(R100, Q104, E113, D116)。これらをAlaに変化させた変異体を作製し,反応促進に与える影響を調査することで,活性中心と作用メカニズムを明らかにする。また,CBM1を欠損した変異体を作製し,その役割や効果を決定する。
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