2021 Fiscal Year Research-status Report
酵素タンパク質に驚異的な耐性を与える細菌膜小胞を用いた産廃トリ羽毛分解への挑戦
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20K05789
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
渡部 邦彦 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (90184001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増村 威宏 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (50254321)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トリ羽毛 / 産業廃棄物 / 膜小胞 / プロテアーゼ / ジスルフィドオキシドレダクターぜ |
Outline of Annual Research Achievements |
産業廃棄物として大量に排出されるトリ羽毛が効率的に分解できないことが現在の問題であり、本研究ではこの問題解決に対処する。そのため申請者らが発見・単離した好熱性細菌Meiothermus ruber H328株を用いた。この菌株は、すでに培養によりトリ羽毛を強力に分解することが分かっている。本研究では、さらに本菌株により産生されていることを見出している細菌膜小胞が、酵素タンパク質に驚異的な変性剤耐性を付与する性質を利用し、ケラチン分解性プロテアーゼ(Mrh_0874)だけでなくトリ羽毛のうちジスルフィド結合を開裂することによりトリ羽毛の分解に寄与するタンパク質ジスルフィドオキシドリダクターゼにも焦点をあて、膜小胞表層への提示を含めて検討することにした。なお、タンパク質ジスルフィドオキシドリダクターゼは膜小胞にはほとんど局在しないことが分かっており、膜小胞画分のトリ羽毛分解への寄与を高めることがとり羽毛分解能の向上に繋がると考えた。そこで、本研究では、タンパク質ジスルフィドオキシドリダクターゼ(Pdo7; Mrh_1589)の遺伝子を、膜小胞表面に局在するタンパク質SlpA遺伝子に融合させるプラスミドを構築し、このプラスミドを用いて、H328株を相同組換えにより染色体ゲノムに挿入する方法を行っている。加えて、H328株がトリ羽毛分解に作用する際、ケラチン分解性プロテアーゼ活性を中心に細胞内外での局在性の変化を解析するリクルート解析を行なった。別途、トリ羽毛分解物のバイオポリマーとしての機能を調べており、H328株により分解されたトリ羽毛の利用性についても検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでにdegP遺伝子をH328株に相同組換えにより組込み、膜小胞の産生能を上げることには成功している。そのため、令和3年度は、膜小胞産生能という量的改良ではなく、膜小胞の持つトリ羽毛分解能力を向上させようという質的改良に執心した。そのため、タンパク質ジスルフィドオキシドリダクターゼ(Pdo7; Mrh_1589)に着目し、この遺伝子を膜小胞表面に提示できるようにした。そのためには、膜小胞表面にあるタンパク質SlpA (S-layer protein; Mrh_2961)を足場にしてPdo7を融合させた。即ち、まずSlpA遺伝子を破壊したH328株を抗生物質ハイグロマイシン耐性から取得した。なお、SlpAタンパク質は、細胞膜局在のための領域が想定されており、また膜貫通のために必須な微細な構造を調べることができないため、フルサイズを用いてPdo7タンパク質との融合を行うことにした。その後プラスミドpUC119をベースにしてSlpA遺伝子を組込み、その直後にPdo7遺伝子を結合させた。このプラスミドを、SlpA遺伝子を欠失したH328株に入れ、相同組換え株を得た。SDS-PAGEとWestern blottingの解析から、SlpA とPdo7の融合は確認されたため、膜小胞表面に局在しているかどうかを、degP遺伝子破壊株に対して確立した膜小胞の簡易調製を適用して、現在Pdo7の膜小胞表面提示を確認しているところである。加えて、H328株がトリ羽毛分解に作用する際、ケラチン分解性プロテアーゼ活性を中心に細胞内外での局在性の変化を解析するリクルート解析を行ない、細胞表層においてトリ羽毛分解のためのケラチン分解活性が強いことが確認された。別途、トリ羽毛分解物のバイオポリマーとしての機能を調べており、H328株により分解されたトリ羽毛の利用性についても検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
トリ羽毛の分解を増強するという目的で、degP遺伝子破壊とPdo7を膜小胞表層へ提示するという2つの試みを行ってきたわけであるが、この2つを組み合わせてトリ羽毛分解増強に繋がるかの検証を行えるよう検討していきたい。その場合、degP遺伝子欠損株の温度感受性があるため60℃が好ましいけれども、遺伝子欠損株の生育とトリ羽毛分解効率が下がることも、考慮に入れる必要がある。今後はケラチン分解性プロテアーゼ活性だけでなく、Pdo7によるタンパク質ジスルフィドオキシドリダクターゼ活性も調べ、膜小胞を含む細胞外画分のトリ羽毛分解への寄与を、リクルート解析と共に検証する。また、トリ羽毛分解物をバイオポリマーとしての機能が分かりつつあり、今後本法による分解が、バイオポリマーとしての有用性を上げることに繋がるよう検討を加える。
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