2020 Fiscal Year Research-status Report
菌類ウイルスによる焼酎生産菌の一次・二次代謝産物生産機構に関する研究
Project/Area Number |
20K05791
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
藤森 文啓 東京家政大学, 家政学部, 教授 (50318226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 秀樹 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (40263628)
千葉 壮太郎 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70754521)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 菌類ウイルス / 黒コウジカビ / 焼酎 / マイコウイルス / ウイルスフリー |
Outline of Annual Research Achievements |
Aspergillus属菌は酒類や発酵食品の醸造、医薬品等の生産で活躍する有用菌類で、時に植物病害やカビ毒、日和見感染症の原因ともなる。近年、属菌よりマイコウイルスの発見が相次いでいるが、宿主菌へ及ぼす影響はほとんど理解されていない。そこで本研究は、食用生産に用いられる黒麹菌(Aspergillus luchuensis)に感染しているウイルスの探索・同定と、それらウイルスが宿主であるA. luchuensisに及ぼす影響を理解することを目的として行っている。 1本鎖(ss)RNAウイルス6種は、Narnaviridae(1分節および分節型と思われるもの)が4種、Botourumiaviridae1種、Umbra-like virus1種であった。2本鎖(ds)RNAウイルス6種は2分節の3種に加え3分節と考えられるPartitiviridaeが4種、CTTV-like virusが1種、11種の株すべてに存在するAlternavirusの合計12種が感染していることを確認した。また、この中の66-FCG1604株を親株として、菌糸先端分離によるウイルスフリー株(66-18)および、alternavirusとumbra-like virusの重複感染株(66-4)、umbra-like virus とpartiti-like virus(3分節)の重複感染株(66-34)を得ることに成功した。生育試験、胞子形成、分生子柄などの形態およびクエン酸を含む1次代謝物の生産性試験を比較したところpartiti-like virusを含む株(66親株、66-34)で、形態異常、生産性の低下が認められた。本ウイルスの宿主への影響、特に宿主遺伝子発現およびメタボロームへの影響評価は推進すべき重要な課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A. luchuensisに感染する菌類ウイルスの普遍性と多様性の一端を紐解くことに成功した。得られた宿主系統の解析により、未同定の三分節RNAウイルス(partiti-like virus)は宿主菌の表現型および米麹の性質に影響を及ぼしていることが示唆された。見出された多くのウイルスは不顕性感染であったが、未同定の三分節RNAウイルスは宿主菌の胞子形成、分生子柄形成、総酸度、クエン酸生産性などに影響しており、今後はそのメカニズム解明が必要である。この三分節RNAウイルスの性状解析を進めるとともに、醸造生産物である焼酎の成分解析、官能評価を行うことでのウイルスの機能解析が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、ウイルスフリーによる酒類生産物の生化学的特性、代謝産物の生産性などの検討が必要であり、協力企業等の選択が必須となる。ラボ単位でのデータに加え、成果物としての醸造飲料の官能評価試験のためのいくつかのハードルをクリアしなければいけない。例えば、倫理審査申請や官能評価の設問の客観的内容の構築など、専門外の部分が多くあり、協力者の選定が重要と考えられる。しかしながら、菌類ウイルスの単なる宿主への負の効果研究ではなく、ヒトにおいての正の効果を検証する本研究は、ウイルスの活用という点では今後着目される内容であるので、慎重に結果を出したい。
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Causes of Carryover |
2020年度は本研究の中で行う醸造協力先である離島への調査研究の旅費がコロナ禍で行くことができず支出がなかったこと、また、研究協力者等の実質的な実験時間が確保できず、研究が当初予定よりも行えなかったことで研究費支出が少なかったことから2021年度への繰り越しを実施することとなったため。
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Research Products
(3 results)