2020 Fiscal Year Research-status Report
酪酸産生菌 F. prausnitzii の糖代謝と機能性物質の産生
Project/Area Number |
20K05792
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
遠藤 明仁 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (90445685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶川 揚申 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (30646972)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酪酸産生菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
酪酸産生菌の一種である Faecalibacterium prausnitzii はヒト腸内で最も主要な酪酸産生菌であり、現在ではその存在量が腸内の健康マーカーの一つとして考えられている。本研究では本菌を微生物保存機関より入手し、オリゴ糖代謝試験を行うことで、潜在的に本菌の生育促進に繋がるオリゴ糖を複数明らかにした。 本菌は特にフルクトオリゴ糖類を好んで生育し、プレバイオティクスとして広く利用されているラフィノースやキシロオリゴ糖などをほとんど代謝しないという特徴を有していた。そして幾つかのオリゴ糖培養時における 抗炎症物質 MAM の産生能を検討し、糖源が MAM の産生能に与える影響を一部明らかにした。 また、データベースに登録されている F. prausnitzii 菌株のゲノムデータを全て収集し、菌株間でのゲノムの類似性及び糖加水分解酵素の比較を行った。その結果、F. prausnitzii はゲノムレベルで非常に多様性に富んでおり、複数の系統群に分かれることが示唆された。また、その系統群ごとに一部異なる糖加水分解酵素を保持していることが明らかになった。フルクトオリゴ糖代謝に必要となる遺伝子はほぼすべての菌株で保持されていた。この結果より、腸内の F. prausnitzii を効率よく増殖させるための基礎的な知見がもたらされた。また、F. prausnitzii は系統群ごとに著しく構造が異なる MAM を合成する可能性がゲノム解析から明らかとなった。この構造が大きく異なる MAM が同じ機能性を保持しているとは考えにくいことから、MAM の構造と機能性について研究を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により研究室での実験は一部制限されていたためにその部分では少し遅れがあるが、在宅でゲノム解析を進めたため、そちらの部分では十分な進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もこれまで通り研究を進めていくことで、実験面でみられる少しの遅れは解消可能であると考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により実験開始が遅れたことから実験に少しの遅れが生じ、当初予定の予算執行が出来なかった。現在は研究活動が順調に進んでおり、遅れを取り戻しつつあるため、令和3年度は問題なく研究の進展とそれに伴う予算の執行が可能であると考えらえる。
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