2020 Fiscal Year Research-status Report
高等真菌類によるエネルギー消費削減型糖代謝機構解明のための分子基盤構築
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20K05794
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
知久 和寛 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 講師 (30711618)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高等真菌 / キノコ / 宿主ベクター系構築 / 酵素 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
キノコは担子菌門および子嚢菌門に属する高等菌類であり,森の分解者として,生態系における炭素循環システムを維持するのに大きく貢献している微生物種の一つである。自然界に存在する代表的な多糖であるデンプン,セルロース,キチンなどの植物性・動物性多糖の分解および資化能に長けており,その資化に関わる多様な酵素群をもつ。 近年、多くのキノコのゲノム解読が完了もしくは進行中であり,それら遺伝子情報を用いたキノコの分子生物学的研究が盛んになっている。キノコのゲノムサイズは30~40 Mbpであり,細菌の約十倍の遺伝子情報を含むことから,キノコはこれら多種・多様な遺伝子情報を駆使して効率的に多糖・オリゴ糖の代謝を行っている。その一例として,キノコが生命活動を行う上で必要なエネルギーの消費を効率的に削減できる特異的な代謝機構を有する。 本申請研究では,高等菌類が保有するエネルギー消費の削減化を可能とする新規代謝機構の全貌を解明すること目的に、その分子基盤としてキノコを用いた宿主ベクター系の構築とそれを用いた糖代謝機構関連酵素および関連酵素遺伝子の機能解析を行った。 今年度は宿主ベクター系の構築に向け、宿主として用いるキノコのドラフトゲノム解析を行った。その結果、酵素発現用あるいは遺伝子破壊用ベクターの構築に必要な特定遺伝子のプロモーター領域やターミネーター領域の配列情報を取得することができた。これらデータを元に、キノコを用いた糖関連酵素遺伝子の発現ベクターの構築を進めている。 一方、エネルギーの消費を効率的に削減できる特異的な代謝に関連すると考えられる酵素が見出されたキノコ種については、トランスクリプトーム(RNA-seq)解析を行った。しかしながらいくつかのキノコ種では、ゲノム解析情報やトランスクリプトーム解析情報が使えなかったため、配列情報の再構築に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い都内の大学に所属していることもあり、いわゆるウエットな実験を十分に進めることが難しいと判断した。そこで当初の予定を変更し、近年比較的安価になった次世代シークエンサーを用いたドラフトゲノム解析やトランスクリプトーム解析の試料前処理からシークエンスの部分を外注し、その後のバイオインフォマティクス解析を自分でやることで時間的な無駄の少ない方向で研究をすすめることにした。その結果、キノコを用いた宿主ベクターの構築やキノコの持つ糖関連酵素のcDNAライブラリー構築に向けた基礎的な配列情報および今後の研究に向けた拡張性も高い情報を取得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍による混乱は次年度も続くと考えられるため、ウエットな実験が難しい時期はバイオインフォマティクス解析を継続し、機能遺伝子候補のスクリーニングを行う。一方で、必要な配列情報を取得することができたものもあるため、情勢を見て、実験計画通りにキノコを用いた宿主ベクターの構築をすすめる。さらにそれを用いた組換え糖関連酵素の生産系を構築し、糖関連酵素遺伝子の機能解析を進めていくことを計画している。
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Causes of Carryover |
遺伝子工学実験に使用する各種消耗品を今年はあまり使用しなかったため、未使用額が生じた。次年度予算と組み合わせて、宿主ベクター系の構築のための遺伝子工学実験用の消耗品費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)