2021 Fiscal Year Research-status Report
Epistatic studies of bacterial adaptive growth by two component system
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20K05795
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
山本 兼由 法政大学, 生命科学部, 教授 (40351580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 美歩 法政大学, 生命科学部, 助手 (40865820)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細菌 / 適応増殖 / 環境応答 / ゲノム編集技術 / ゲノム微生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
二成分制御系(TCS)は原核生物特有な情報伝達システムである。環境変化を感知し、自己リン酸化するセンサーキナーゼとそれからリン酸基を受け取り活性化するレスポンスレギュレーターで構成する。大腸菌ゲノムには約30ペアーのTCSが推定され、さらに系間で情報伝達ネットワークを構築する。古細菌を含んだ原核生物ゲノム情報から、TCSはゲノム1 Mbpあたり2ファミリー存在し、5 Mbp以上のゲノムでは8ファミリーで飽和する。また、ほとんどの原核生物ゲノム上のTCS遺伝子は多コピー存在し、原核生物種で保存されるコアゲノムに分類される。本研究では、原核生物に保存されるTCSネットワークによる環境応答生存戦略を基盤とした適応増殖戦略の理解を目的とした。これまで、大腸菌の全TCS変異株を独自開発したHoSeI法により単離した。親株と全TCS変異株について、[A]ゲノムの構造と機能の相違を検討するため、ゲノムミクスのデータを回収した。また、[B]増殖力の相違を検討するため、トランスクリプトームおよびプロテオームのデータを回収した。さらに、[C]酸化還元とプロトン産生で概観する代謝力の相違を検討するため、培養液の酸化還元電位およびpH測定を行った。今後、オーム定量データの統計的分析、増殖定量データの分析、細胞内代謝のメタボローム解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸菌の親株と全TCS変異株について、[A]ゲノムの構造と機能の相違、[B]増殖力の相違、[C]酸化還元とプロトン産生で概観する代謝力の相違について各種定量データを取得し、それらの情報を統合し考察予定である。設定した課題における進捗状況を以下に記す。 [A]ゲノムの構造と機能の相違:親株と全TCS変異株に対し(1)ゲノムシークエンシングからすべてのSNPを見出した。(2)全RNAを抽出し、RNA-seq分析を行った。(3)全タンパク質を調製し、LC-MSによるショットガン解析からそれぞれのタンパク質プロファイル情報を得た。 [B]増殖力の相違:親株と全TCS変異株に対し(1)フェノタイプマイクロアレイ解析システムを用い、約2000種の培養条件に対する増殖測定を行った。(2)自動培養測定器を用い、LB培地とM9グルコースにおける培養温度23℃、32℃、37℃、42℃の4条件で増殖を測定した。その結果、すべての条件で概ね全TCS変異株は増殖抑制傾向だった。(3)蛍光倒立顕微鏡を用い、寒天培地上の一細胞増殖を計測した。その結果、すべての条件で概ね全TCS変異株は増殖抑制傾向だった。 [C]酸化還元とプロトン産生で概観する代謝力の相違:親株と全TCS変異株に対し(1)培養液中の酸化還元電位を計測した。その結果、親株と全TCS変異株の培養液において酸化還元電位の顕著な違いは見出せなかった。(2)培養液中のpHを計測した。その結果、親株と全TCS変異株の培養液においてpHの顕著な違いは見出せなかった。(3)pHインジケーターを用いた一細胞増殖測定で観察する条件検討した。その過程で、大腸菌における新たな中性pHを感知する膜レギュレーター(HdeD)を発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸菌の親株と全TCS変異株について、予定していた各種定量データは概ね取得した。今後、それらの情報を統合し考察予定である。設定した課題に対する今後の方策を以下に記す。 [A]ゲノムの構造と機能の相違:(1)全TCS変異株は30回以上のゲノム編集で単離された。検出したSNPが導入したゲノム編集段階を調査する。(2)親株と全TCS変異株の転写プロファイルのクラスター分析、パスウェイマッピング、主成分分析を行う。(3)また、タンパク質プロファイルのクラスター分析、パスウェイマッピング、主成分分析も行う。 [B]増殖力の相違:(1)フェノタイプマイクロアレイ解析から得られた約2000条件下の培養曲線に対し、飽和細胞密度および比増殖速度を用いた統計的分析を行う。 [C]酸化還元とプロトン産生で概観する代謝力の相違:(1)(2)で予定した実験から、親株と全TCS変異株の培養液における酸化還元電位およびpHに違いを見出せなかった。そこで(3)一細胞内pH測定に加え、メタボローム解析を行う予定とした。
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Causes of Carryover |
コロナ渦により2021年度予定していた海外学会など旅費支出は論文掲載費に充てる計画をとった。しかし、昨今の論文掲載費が高価であり、慎重に進めた結果、繰越が発生している。また、実験補助をメインに計上した人件費・謝金の支出は叶わず、それらを同じ目的となる業務委託費への充足を図ったが、やはり高いコストで慎重に進めた結果、幾分かの繰越が発生した。それらを踏まえ、2022年度は、2021年度とほぼ同じ社会状況と予想した。当該年予算計画のうち、オンラインで開催されるようになった学会参加へ旅費を充て、人件費・謝金は相応のデータを回収する業務委託費に充てる計画をした。
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