2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of acid resistance in Campylobacters
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20K05796
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
江口 陽子 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (30757422)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カンピロバクター / 酸耐性 / 酸ストレス / 酸化ストレス / 二成分制御系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、カンピロバクター食中毒予防のために、本菌の酸耐性機構の解明を目的とする。本菌は乾燥や大気中の酸素による酸化ストレスに弱く、環境ストレスに対する耐性は低いものと認識される。ところが、少ない菌数でヒトへの感染が成立することから、胃の強酸性条件を生きたまま通過しており、そのために必要な強い酸耐性能を有することが予想される。本研究では、「カンピロバクターがどのようにして胃の酸ストレスに耐えうるか」を解明するために、酸耐性条件の見直し、多数の株間での酸耐性能の比較、実験室進化、情報伝達系の関与を検討したうえで、高度に酸耐性化あるいは酸感受性化した株を取得する。取得された株のゲノム解析、転写解析などから本菌に備わる酸耐性機構を解析し、カンピロバクター感染予防への応用を目指す。 R3年度では、R2年度で確定した酸処理条件を用い、酸処理を複数回繰り返す実験室進化を再検討した。2種類の標準株に対して処理を10回繰り返したが、酸耐性化した株は得られなかった。当研究室では実験室進化実験を3年間繰り返しているが、耐性化した株の取得には至っていない。この結果から、酸耐性化は単純な1遺伝子の変異によって獲得されるものではないと判断した。さらに、ストレスを受けた細菌は VBNC (viable but non-culturable; 生きているが培養できない)状態になることが多く、R3年度には酸処理されたカンピロバクターの多くの細胞がこの状態であることを示唆する実験結果が得られた。今までの酸耐性化は、寒天培地上に出現したコロニー数を生菌数として生残率を測定していたことから、VBNC 状態も考慮して R4 年度は検討する。 カンピロバクターがもつ情報伝達系の酸耐性への関与を検討するために、情報伝達に関わる二成分情報伝達系遺伝子の破壊株コレクションの作成をほぼ完成し、ストレス試験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、R3年度中に酸耐性株を取得してゲノム解析を解析する予定であったが、実験室進化によって酸耐性化した株が取得されなかったことから、ゲノム解析まで進めなかった。R3年度の検討により示唆された、菌のVBNC 状態を考慮した方法で、R4 年度は酸耐性測定条件をさらに検討する。情報伝達系の破壊株は順調に作成が進んでおり、完成まであと一歩の状態となった。R4 年度は、各破壊株におけるストレス応答を測定し、明確な変化を見出したものに対して転写解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
酸耐性に関しては、酸処理後の VBNC 状態を考慮した測定法であらためて検討する。さらに、VBNC 状態からの蘇生条件を検討する。 情報伝達系とストレス応答の関連については、破壊株コレクションを用いて、酸ストレス、酸化ストレス、塩ストレス、熱ストレス、乾燥ストレスなどとの関連を測定し、明確な変化を見出したものに対して転写解析を行い、ストレス応答メカニズムを解析する。また、R2年度に、酸処理時に環境中の二酸化炭素濃度の影響を見出しており、転写解析によってそのメカニズムを解析する。 最終年度であるため、論文に発表できるような成果を上げるために研究速度をあげる。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が遅れ、R3年度に予定していたゲノム解析、転写解析が実施できなかったため、その分の予算が余剰となった。繰り越した予算は、R4年度に行う転写解析に使用する計画である。
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Research Products
(4 results)